松脂選びについて、生徒たちへ伝えていることまとめました。
♪ 松脂にこだわるより、腕前をみがこう
松脂の違いによる「音色」「弾きやすさ」の差は、腕前の違いによる差に比べれば、無きに等しいです。
弓を指に引っかけるようにして保持し、弦の上に置いてこすれるくらいの腕前になれば、松脂による違いがでてきます。
♪ 1000~2000円のもので十分
安価な分数バイオリンセットに楽器店や工房がよく付けてくれるのが、ピラストロ社のピラニートです。昔はハイダージン社の蓋カパタイプをよく見かけました。これらは1000円を切る値段です。
また千円単位のちょっとした値差で、可愛いオシャレなものも手に入ります。可愛いものにつられる子には、バイオリンケースの素敵なものを買うより、安上がりです。
ベルナルデル(2000円ちょっと)が最もパフォーマンスに優れていると思ってきたのですが、最近質が落ちたようです。粒子が粗くなったような。枚方の職人さんもそう言われていました。
松脂が違うときの、こすった手触りの相違を感じるようになったら、もっと高価なものを試していいと思います。お勧めはベスポークです。レッスンで使ってみたい生徒さんはお申し出ください。もっと手ごろな価格のお勧め松脂も探しておきます。
これまでに私が使った松脂は、ヒル社の茶巾タイプ、クロネコライト、クロネコダーク、ベルナルデル、セシリアのピアチェーレ、アルシェの緑の紙箱・緑の布につつまれた黄色い松脂(最近見ない)、ベスポークVnクリスプ、ベスポークVaサプレ、などです。
♪ 粘度は高すぎないものがいい
粘度が低い松脂のほうが、楽器が汚れにくく、弦が長持ちします。粘度の高い松脂は、適量が難しいです。
20~30年前はクロネコだったら、バイオリンにライト・ビオラにダークでした。しかしある時期から、生徒の買ってくるセットバイオリンに、クロネコダークが付いてくるようになりました。粘度の高い松脂がよい、という潮流になってきたため、私も粘度高めの松脂を使ってみたのですが、結局ベルナルデルに戻りました。
粘度の高い松脂がよい、と言われる理由は、弓が弦に吸いつきやすいからだそうです。しかし多少弓が浮いても音が出てくれるのは、粘度の低い松脂です。粘度の高い松脂は、一度弓が弦から浮くと戻りにくく、弦の上に弓を置いておける技量がある場合に向きます。
粘度が高いと暑さで形が崩れやすいです。一度溶けてプッチンプリンのようになると、弓の毛にパウダーが乗りにくくなります。
♪ 松脂の梱包
梱包がシンプルですぐ塗れる松脂のほうが、練習意欲をそぎません。松脂を取り出してから塗れるまでの時間は、みんな短いほうが嬉しいと思います。
梱包がシンプルだと、落としたときに割れやすいこともあります。子供に練習してもらうには簡単に塗れる松脂がよく、実際そうしたものが付けられることが多いのですが、割りやすいのも子供です。
標題の写真のベルナルデルは、梱包をときやすくするため布の端を切っています。
木や皮やコルクなどの自然素材も、手に取ったとき気持ちよく、衝撃にも強いです。