結論から言えば、才能のある生徒さんより、努力する生徒さんのほうが上手になります。
才能ある人と、そうでない人が同じくらい努力したら、それは才能ある人が上手になります。でも才能があって練習しない人は、まったく進歩しません。普通の能力だけどコツコツ練習していれば、少しづつ上手になります。

♫才能があった人の事例

才能があったのに、上手にならなかった生徒さんの事例です。

●京田辺市の楽器店にいらした60代の女性。こんな感じですか?と初めて構えたフォームに、直すところはありませんでした。楽譜も読め、音感・リズム感もありました。

翌週レッスンにやってくると、前回したことが消え失せています。イチから説明し直し。そんなことを毎週、二ヶ月ほど繰り返しているうちに、辞めてしまいました。レッスン内容も曲も進まないので、面白くなかったのではと思います。

多方面に才能があり、おそらくどの趣味も労せず一定のレベルにすぐ達したのではないかと思います。バイオリンは、労せねばそれなりの成果は出ません。ほかに沢山楽しいことがある中で、バイオリンに魅力を感じなかったのでしょう。

●年長さんから5年生までレッスンした子供
身体能力が高く、音感もリズム感もある。自然に触れさせる外遊びを積極的にしているご家庭の子供さんでした。しかし何故かその子は、身体能力や音感力を発揮しようとしません。まるで抑制しているかのよう。
先達者の言うことに耳を傾けたり、コツコツ学びを積み重ねていくことも、不得手というより「やらない」頑固さがありました。

自分の能力を発揮しようとしない子供の生徒は、ほかにもいました。私の気にしすぎ?と思っていたところ、他の先生からも同様の事例を聞きました。

♫才能がなかった人の話

コツコツ努力することによって上達した生徒さんは、才能があると感じたのに伸びなかった生徒さんより、ずっと沢山おられます。
体験レッスンで生徒さんの才能はだいたいわかりますが、熱意があり努力できる人の伸び方は、先生の見立てを越えてきます。

バイオリン・ビオラ教室を始めて最初のころは、身体感覚(固有受容覚)が高い人でないと、バイオリン修得は難しいだろうと考えていました。しかし生徒さんたちの身体感覚あるなしと、バイオリンの継続意欲に、相関関係は見られません。教え方を工夫しながらレッスンしていると、ゆっくりですが、誰でもバイオリンが身につくことが分かってきました。

「固有受容覚」とは?
2022.08.18 体の緊張と弛緩

一般的に才能がなければ無理だろうと思われている「左手首の角度」「右手首の角度」「左小指の置き方」「右小指の置き方」なども変わってゆくのです。変わりにくい・変わるのに時間がかかるということは、一旦変わったら戻りにくいということでもあります。才能がある人との違いは、上達する速さだけでした。要は本人の気持ちと努力次第なのです。

スズキメソードの鈴木鎮一氏は、「どの子も育つ、育て方ひとつ」と後世に残る名言を発信されました。私は「どの人も育つ、年齢は関係なし、意欲次第」と言いたいです。

●もう10年近くレッスンにお越しになられていて、まだ「子供のためのバイオリン教室 <中巻>」をされているシニアの生徒さんがおられます。しかしこの方は上達されているのです。前進しています。なによりも立ち姿がすらりとしてきました。バイオリン教室に通い始めたころは、腰痛や肩こりで、いつも病院や整体のお世話になっていたようです。

●特筆すべきは、中学3年生で体験レッスンにやってきた男子です。「君には無理だ」と口から出かかるほど不器用でした。体験レッスンでバイオリンを弾いてみて、自分には無理だと分かっただろう、と先生は思ったのです。ところが彼は通い出しました。となれば、彼がバイオリンを弾けるようにしてあげねばなりません。
その子は幸いにも、音楽の才能がありました。音感・リズム感のみならず、「曲を音楽的に表現する」という点において、高い能力がありました。これを発見したとき先生は、心の中で小躍りしました。
基礎練習も粘り強くやる子で、高校2年生になると、小野アンナの2オクターブスケールを課せるくらいになりました。

私も演奏フォームを修正し続けています。(もうすぐアラ還です。)
一緒に頑張りましょう。