ポジション移動に入るときには、できていてほしい事柄があります。それらを書き出してみました。既にポジション移動をしている方もチェックしてみましょう。
私のレッスンでは初歩の生徒さんを指導しているとき、これらの進度やバランスをいつも気にしています。また経験者さんでもできていない項目がある場合は、それをクリアしてもらえるようカリキュラムを考えます。
これらができて、3rdポジションが使えるようになったら、アマオケに入団することもできます。
1)目で読みとった音・音楽を再現する
2)耳で聴きとった音・音楽を再現する
3)弓づかい、リズム変奏
4)音と音のつながり方、音楽の流れ、休符の取り方
5)アンサンブル
6)半音と全音
7)運指と相対音感、音程の基本的な構造
8)調ごとの左指をおく位置。調が変わったときの変化の規則性
9)楽器の手入れ 調弦の仕方
1)目で読みとった音・音楽を再現する
いわゆる譜読み力です。
2020.09.15 場所読み:「串だんご」と「どら焼き」の法則
2)耳で聴きとった音・音楽を再現する
いわゆる耳コピー力です。
3)弓づかい、リズム変奏
① 音符の長さに応じた弓づかい
長い音符は弓を長くつかい、短い音符はコンパクトにつかいます。
② ♩=♫
4分音符1つの長さ=8分音符2つ、のタイムで弾けなければなりません。2分音符や16分音符も同様。
4/4拍子、4分音符だけのエチュードや曲を用いて、♩♩♩♩というリズムを、♩♫♩♫ や ♩♫♫♩ というように変えます。3連符や16分音符4つ、付点8分音符+16分音符などにも変えてみます。変える箇所はアトランダムに。
③ スラー
8分音符4つのうち、2つにスラーを付けた弓づかいを3パターン、弾けるように練習します。
また②と同じようなエチュードor曲で、アトランダムにスラーを付けて弾きます。
4)音と音のつながり方、音楽の流れ、休符の取り方
テクニカルなことや譜読みができるのに、音楽的な表現ができないケースがあります。本人が問題を感じていないことが多いのですが、音楽的に弾けるほうが楽しいのではないかと思うので、そんな弾き方の提案をします。
また休符のときに、音楽を感じつつ音を出さないことも、音を出すことと同じく大切です。
5)アンサンブル
先生の 2ndバイオリンと合奏する練習を、はやいうちから始めます。ピアノ伴奏や打楽器と合わせることもあります。生徒が興味を示せば、生徒にも 2ndバイオリン・ピアノ・打楽器をしてもらいます。
6)半音と全音
いつ指をくっつけるべきで、いつ指を離すべきか。
指を置いて弾いてから結果が明らかになるのではなく、出したい音程の位置がわかった上で置かなければなりません。
7)運指と相対音感、音程の基本的な構造
耳コピーによるスケールの練習で、バイオリン・ビオラという楽器の基本的な構造をおぼえてもらいます。
現代は神経伝達を攪乱するものが多いせいか、0→1→2→3 や 3→2→1→0の理解に時間がかかります。生徒の理解度を確かめながらゆっくり進みます。
① 1stポジションでのスケール
2023.11.28 バイオリン初心者さんの、目的別スケール練習
② 1stポジションでの アルペジオ・三度のスケール
③ 3rdポジションを使ったスケール
④ 2オクターブのスケール
8)調ごとの左指をおく位置。調が変わったときの変化の規則性。
独奏曲・メロディラインを弾いているだけなら、耳コピー力でまにあいます。私はこの(8)を理解しないままスズキの10巻まで行ってしまいました。大人になってから譜読みが遅くて苦労したのは言うまでもありません。オケで弾きたいなら必須の知識です。
ほかの教室から移ってきた子供たちを見ていると、テクニカルな身体能力ではなく、譜読みがわからないため行き詰っているケースがあります。生徒たちには、調ごとに以下の課題をしてもらいます。
① スケールで、4弦✕4指すべての音を弾く
② 指板の画に、4弦✕4指の位置を書く(ペーパーテスト)
まずハ長調。合格したらト長調(♯1個)、ニ長調(♯2個)、イ長調(♯3個)、ヘ長調(♭1個)の順で課題をこなします。
1枚の紙に、5つの調の画が書かれたものを見て、規則性があることを確認してもらいます。
長調の規則性がしっかり理解できてから、短調のスケールをします。すると
●長調と短調の規則性
●和声短音階・自然短音階・旋律短音階
の説明をしても、ちゃんとついてきます。
9)楽器の手入れ 調弦の仕方
楽器の手入れについては、最初のうちはウルサイことを言わず、少しづつ教えます。
2022.09.22 弦や顎当てが長持ちする、バイオリンの拭き方
初めてバイオリンを習う生徒さんには、アジャスターを必ずつけてもらいます。
経験者さんでもペグ調弦が不器用であれば、アジャスターをつけてもらうことがあります。バイオリンの腕前と、ペグ調弦のうまさは、必ずしも一致しません。
アジャスター調弦は演奏フォームを整えるのに役立ちますが、ペグ調弦は役立ちません。それどころか体に無理を強います。体を柔らかく上手に使えて初めて、ペグ調弦が上手にできます。私の教室では、アジャスター調弦からペグ調弦へ移行してもらうタイミングは遅めです。
調弦の仕方は、最初に全部教えるのではなく、少しづつじっくり教えます。調弦の時間も、バイオリンの弾く姿勢を整える時間にしてもらうため、姿勢に関して課題を出します。
レッスン時の調弦は、早いうちから本人に任せます。家での調弦のやり方に、問題がないかの確認も兼ねています。