会社員だった2006年の4月。平日だとしたら何故その時間に家にいたのか、忘れてしまいました。テレビをつけたら喪服の女性がスピーチをしていました。死者107名 負傷者562名を出したJR宝塚線脱線事故の一周忌、追悼式典の中継でした。
母を失った悲しみ。
JR西日本への憤り。
2人目の遺族代表として、おじさまが登壇されました。
妻がいなくなった悲しみ。
これからの自分の生き方への決意。
JR西日本へ向けられた言葉は、ありませんでした。
衝撃を受けました。私なら、JR西日本への憎しみを、どう言葉に表現したら伝わるか、夜を徹して考えるでしょう。
おじさんは憎しみを感じないのだろうか?
その人の名前は、山田さんと言いました。
借家の庭の、不思議な置き物
2010~2015年 南米ウルグアイの大統領だった、ホセ・ムヒカという人がいます。
若いころ活動家だったムヒカは、13年間投獄され、「身柄を確保したとき殺せなかったから、これからお前らの頭をおかしくしてやる」と拷問されました。
しかし政権交代による恩赦で釈放された3日後のスピーチに、報復の言葉はありませんでした。許すこと、過去を乗り越えることの大切さを、語ったのだそうです。
憎しみは建設的な感情ではない
憎しみは毒です
誰も払わない負債を負うために、人生を送ることはできない
人は他者に憎しみを抱くことがあります。傷つけられたからでなく、自分と考えが違うというだけで、抱くこともあります。けれど憎しみは、自分自身をむしばむ毒だと言うのです。
ホセ・ムヒカはこんな発言もしています。これは猪突猛進な私には、非常に手痛い言葉です。
思想であれ宗教であれ、狂信は、異質なものへの憎しみを生む
異なるものに寛容であって初めて、人は幸せに生きることができる
ホセ・ムヒカは「世界でもっとも貧しい大統領」と呼ばれました。彼のもっとも有名な発言は、
私は貧乏ではない 質素なだけです
でしょう。またこうも言いました。
貧乏とは、欲が限りなくて満足できない人のこと
私は持っているもので贅沢に暮らすことができます
私の心のなかには、食べ物(富)が確保できていても、もっと確保しておきたい、という気持ちがあります。
この気持ちとは、どう付きあったら、折りあったら、いいのでしょう?
言うまでもなく「食への欲」「富への欲」は、大切な生存欲求のひとつです。生存の欲求がない種や個は、滅びてしまいます。