●初めてバイオリン・ビオラを構えさせたとき、楽器を首にはめる人と、はめない人がいます。体がはめようとしない人には、「はめるんやで」と教えます。未就学の子供に「首ぱっこん」と言ったら腑に落ちたようでした。子供にはオノマトペがよく効きます。


●大人の体は反応してくれないことがあります。理屈で説明します。

バイオリンは、凹凸の「凸を横にしたような形」。
首は「凹を横にしたような形」。

顎の下と、バイオリンの表板がさわる。
首の横と、バイオリンの側板がさわる。
胸の上と、バイオリンの裏側がさわる。

うまく「首ぱっこん」ができないのは、体の使い方や体幹によるところが大きかったりします。
京都の森悠子先生はレッスンで、子供たちにティッシュの箱を挟ませて、「首ぱっこん」の感覚を掴ませようとします。薄めの箱がいいです。


●バイオリンと、はめる人体側は、形が違うので、ぴったりとはまることはなく、遊びができます。はまっているけど、遊びがある。この状態がベストです。

ぴったり貼りついて動きのない状態は、バイオリンが弾きづらく、頚椎を痛めます。顎当て・肩当てもフィット感が大事ですが、体のカーブとぴったり一致した遊びのない形状だと、弾きづらいのと同じです。

顎当ての上部の角が、首に当たるところにアザができるのは、楽器の押しつけすぎです。プロの演奏家にアザがあるのは、弾いている時間が桁違いだからです。

アイルランドやインドでは「首ぱっこん」をしません。アイルランドの民族音楽アイリッシュでは、バイオリンの構える位置はクラシックとだいたい同じですが、「ぱっこん」という感じではありません。顎当て・肩当てもしなかったりします。またインドで発展した奏法では、バイオリンは完全に首から離れています。

●「ぱっこん」して弾けるようになってくると、肩当てによって弾きやすさが変わることに気づきます。世の中にはいろんな肩当てがあることがわかり、いろいろ試したくなってきます。しかしフィッティングの順番は、顎当てが先、そのあと肩当てです。

バイオリンを構えたときに、左鎖骨と、楽器の下端フレーム中央が少し触れるくらいがいいです。肩当てが発明される前は、ここにバイオリンを置いて弾いていました。バイオリンの表板の高さは、低めが安定して弾きやすいです。実際に距離のちがいを体験すると、よくわかます。

肩当てをはずしてバイオリンを鎖骨の上に置き、表板から下顎までの距離を埋める高さの顎当てを選びましょう。ぴったりより少し低めが、遊びがあってベターです。
楽器と顎当ての間にコルクを挟むと、数mm顎当てを高くすることができます。数mmより高くしたいばあいは顎当てを買い替えましょう。
顎当ての金具が当たって痛いことがあります。金具の形状を違うタイプのものにするか、布や皮などでカバーします。


●ビオラは、楽器の厚み+顎当てだけで、鎖骨から下顎までの距離が埋まってしまいます。バイオリンより大きくて重たいですから、身体を痛めないために顎当て・肩当てのフィッティングはより大切になります。
首の短い人・小柄な人は、テールピースも低くなるよう調整しましょう。テールピースの高さは、テールピースそのものより、サドルの高さで決まります。

小柄な方がビオラを買うばあい、中古で探すのも良い考えです。古い楽器は、木が縮んで小振りになっていきます。またメンテナンスで中をあけるたび、木が少しづつこすれて厚さが薄くなります。水分が抜けて重量も軽くなります。