バイオリン・ビオラを構える姿勢にはいくつかポイントがありますが、首との接点は最も大切と言えるでしょう。ここが不自然だと体を痛めてしまうこともあります。

①バイオリンの側面と、首の側面

バイオリン側板にあるエンドピンの突起が、左鎖骨の端の上あたりにちょっと触れるかな?くらいが、多くの人にとって安定する位置です。
ビオラは触れない位置、ちょっと下方へ外れているくらいが、多くの人にとってよい位置と思います。

その位置がわからない生徒さんには、突起を首のいろいろな場所に当てたり、外したりして、どこが安定すると思うか感じてもらいます。その両者の間のどこかに、安定する位置があることが理解できます。(体幹が悪いと、誤った位置を安定していると感じることもあります。)

自分が樹の幹で、バイオリンは自分から生えている枝、というイメージをするのもいいです。

突起の中央にあるマスタード粒みたいな飾りが、当たって痛いことがあります。バイオリン工房へ持って行けば、テールピースを交換してくれます。自宅でニッパーでカットすることもできるでしょう。(自己責任で)

②バイオリン裏板の縁と、左鎖骨

バイオリン裏板の縁の中央(エンドピンの下)は、左鎖骨(の体の中心側の端)にちょうど乗っかります。

肩当てはおよそ100年前、顎当てはおよそ200年前に登場しました。それ以前は肩当ても顎当てもなく弾いていたわけで、バイオリンは左鎖骨の上に乗せていました。

バイオリンの「幅」「長さ」「高さ」は、肩当てや顎当てが登場する前に固まりました。白人男性がバイオリンを構えたとき、左鎖骨から下顎までの距離がちょうど良いように、「高さ」が決まったはずです。

となれば、肩当てにより、バイオリン裏板の縁と左鎖骨が空いているのは、少しバイオリンの位置が上すぎる、と言えなくもありません。肩当ての高さは、バイオリンの体に対する上下の位置は、バイオリン裏板の縁が左鎖骨に触れるかな?というくらいにしましょう。

顎当ての金具が、鎖骨に当たって痛いことがあります。ヒル型(二本に独立している)の金具だと痛くない、と言う先生がいましたが、人によると思います。私はヒル型の方がごつくて違和感があります。

ヒル型で、脚の間隔がワイドな顎当て

ビオラは、ビオラ裏板の縁の中央(エンドピンの下)は、左鎖骨(の体の中心側の端)より前方へちょっとはずれます。ビオラのサイズは様々ですが、バイオリンより大きいことに変わりはないので、総じて楽器はバイオリンより体の前方へ来ます。

ビオラのサイズは、バイオリン・チェロと違い歴史的に紆余曲折を経てきました。(今でも紆余曲折中?) バイオリンとチェロのあいだの音域を担当するなら、中間のサイズがベストなのです。でも中間のサイズでは、バイオリンの姿勢で弾けないし、チェロの姿勢でも弾きづらい。ワーグナーが愛したヴィオラ・アルタ(ビオラよりでかい)についても、いつかブログ記事で書いてみたいと思います。

③テールピースと、下あご(左ほほ)

①②がよい位置だと、下あご(左ほほ)は、顎当てとテールピースのあいだに来ます。顎当てのお皿がオーバーテールピース型ではないのに、下あご(左ほほ)がテールピースにかかっていないのは、頭部が左に寄っている、または顔の向きが左すぎると考えられます。

ビオラは、下あご(左ほほ)が、バイオリンよりお皿寄りに来ます。

私は子供のころ、下顎(左ほほ)がテールピースにかかっているのが不思議でならなく、これでいいのかなーと思っていました。

体幹のいい人は、教えなくても、下顎(左ほほ)がテールピースにかかったところに来ます。「下顎(左ほほ)は、顎当てのお皿の上にあるもの」という意識下・無意識下にあると、頭部or顔の向きが左へ寄りすぎます。頚椎を痛めてバイオリンが弾けなくなるので、気をつけましょう。

テールピースの上にお皿が来る、オーバーテールピース型の顎当てもあります。このタイプの顎当ては、高さがあるため、女性や小柄な人には向きません。

④顔を、左前方に突き出さない

「顔が楽器を迎えに行く」「顔のセンターと体のセンターが合っていない」という言い方もよくします。楽器がこちらに来るようなイメージを持ちましょう。

⑤バイオリンは、水平というより、縦

「本を本棚に入れるように」という説明の仕方もよくします。実際にハードカバーの本を出してきて、生徒さんの首へ入れる真似をして、イメージしてもらいます。

※バイオリンを縦にすると、左肘が横へ出てしまうことがよくあります。バイオリンと左腕の傾きの関係は、「T」ではなく、「イ」です。生徒さん側から私の構えを見てもらうと、「イ」であることが分かります。

ビオラは、バイオリンより水平です。バイオリンの生徒さんに、もっと縦に!と言うことは多いですが、ビオラの生徒さんの楽器の傾きを修正することは少ないです。

⑥左手を右肩に置いて、右手でバイオリンの指板横のボディを持って、しっくりくる位置にはめる

こんな方法もあります。よく紹介されています。ビオラの方にもお勧めです。

⑦左肩を、前に出したり、上に上げたりしない

左肩がニュートラルな位置にないと、動きにくく、痛めやすく、運弓にも影響します。

演奏フォームを確立するときに左肩にクセがつき、それで何年も弾いてしまうと、直すのが難しくなります。しかし直すのに成功すると、生まれかわったように弾きやすくなります。