ビオラのC線のペグが、ペグ穴と合っていないと感じて、枚方のバイオリン工房へ持っていった。
ペグが硬くてまわらない or ゆるんでしまう場合、まずペグソープ・ペグコンポジションを塗る。(いずれも商品名。3メーカーくらいから発売されている) それでも改善しなければ、ペグとペグ穴が合っていない、ということになる。
2025.09.01 バイオリン・ビオラのペグが まわらない時
2022.03.06 バイオリン・ビオラのペグがゆるむ時
工房で見てもらうと、ペグボックス側に問題があるのではなく、ペグの軸が楕円形になっていることが分かった。鉛筆削りのような工具でペグを削ると、楕円形であることを証明するような削りカスが出てきた。軸が細くなったので、ペグがペグ穴から突きでないよう、軸を短くカットしてくれた。
ペグの軸が、穴から飛びだしている楽器・穴のふちまで届いていない楽器は、ほかの箇所もちゃんとメンテナンスされていない可能性がある。とくに高価なバイオリン・ビオラを買うときは、ひとつの目安となるだろう。もちろん商談が決まってから調整するつもりの店もある。商談を確定させる前に尋ねてみよう。
長堀橋の職人Sさんは、持ち主からペグがまわらない(ゆるむ)と訴えがあり、ペグとペグ穴に問題がないときは、ペグソープを塗ってくれる(作業はサービス)。
それを知っていた私は、ペグソープを塗ろうとしない生徒を、枚方の工房へ行かせた。しかし生徒は「ペグとペグ穴は問題ないと言われました」と帰ってきた。失敗した。生徒は私を目利きでないと思ったようだ。
大島さんは、ペグソープを塗るのは持ち主の仕事と思っているのだ。作業をしたら対価をもらうことになるから、よけいな出費をさせないように、と考えているのだろう。1000円でペグソープを塗ってくれ!と事前連絡しておけばよかった。(作業単価は1000円から) 私が塗ってもいいのだが、そうするとレッスン時間が減ってしまう。
調弦でペグをパキパキ言わせた時点で、その人の演奏技量がわかる。ペグをスムーズに回せるのは当たり前。ペグを回すよりバイオリンを弾く方がずっと難しいもの。
ペグの軸を、鉛筆削りのようなもので削ってから、長さを切る。切るときペグを固定している道具がニッチだ。手作りっぽい。
C線を張りなおすまえ大島さんは、駒と上駒(ナット)に4Bの鉛筆の芯を塗った。弦をすべりやすくするためだ。この作業をする職人さんはあまり見かけない。
C線を張りあげていくとカチカチと音がする。ここが発生源ですね、と大島さんが駒を指さす。そんなところから音がする現象は、初確認だ。けれど今までも音はしていたのだろう。そんな音がするとは知らなかったので聴きのがしていた。駒の溝に石鹸を塗ると少し改善した。
アマービレ楽器では3人の職人さんが下請けで調整をしているが、大島さんが手がけたバイオリン・ビオラはすぐわかる。駒の溝が黒くなっているからだ。生徒が買ってきた楽器がそうなっていると安堵する。
弦の交換方法についての記事に、ペグソープを塗ること、4Bの鉛筆の芯を塗ることを書いている。
2024.01.09 バイオリン・ビオラ 弦の交換方法
作業が終わると質問タイム。
●ビオラのA線に、ビオラ用ではなくバイオリン用のアジャスターを付けても問題ないか?
ビオラのアジャスターはL型しかない。(バイオリンは3種類ある) L型を付けると、弦の駒にあたる位置が、A線と他の弦でかなり違いが出る。
私のビオラは、音質より体の楽さを重視したので39.5だ。できるだけ 弦長が長くなるよう調整 してもらったので、シルク(飾り糸)が駒のきわまで来る。それをちょっとでも是正したくて、バイオリンのアジャスターを付けてみた。
そんなことをする奴は、そんな質問をされるのは、職人さんも初めてだったろう。
L型アジャスターは、バイオリン用のほうが弦をはさむところが狭い。ビオラ弦をつけるときは、ボールのきわをペンチでつぶさなければならない。分数バイオリンも、弦によってはアジャスターにはまらないので、つぶさねばならない時がある。ボールのきわは弦が切れやすい箇所なので、その作業をする時はどきどきする。
L型アジャスターによる問題をなくしたければ、アジャスター付テールピースにするしかないですね、と大島さん。あれは本当にすぐれものだ。大島さんも同意見。

●スプレーニスと手塗りニスの、値段的な境目はどこくらいにある?
最近体験レッスンにきた保護者さんから、バイオリンを買うときニスも大事でしょうか?という質問をうけた。どうやら知り合いのバイオリン職人さんから言われたらしい。(それは、初めてバイオリンを買う人、それも分数バイオリンの人が、知る必要のある情報?)
ニスで音色は変わるだろう。だからメーカーや職人さんは配合をあれこれ考える。けれど音色への影響はニスだけではない。木材のほうがもっと大きい。作り方のほうが大きい。スプレーと手塗りの違いを訴えたかったのだろうか?
スプレーより手塗りのほうが手間(人件費)がかかる。そして時間を要する(場所代がかかる、設備の回転率が下がる)。スプレーは1回?吹き付けて、すぐ乾く。手塗りは何十回も、乾かしながら塗り重ね、1カ月以上かかる。
スプレーニスは、ノズルがつまらないよう、アルコール系の溶剤を使う。厚ぼったくコーティングしたように仕上がる。バイオリンは響きにくい。頑丈になるというメリットもある。暑さで溶けやすく、ほこりや手垢がくっつく。
手塗りニスはオイル系で、何十回と塗っても仕上がりはスプレーより薄い。木材に浸み込んでなじむ。
少なくとも、楽器・弓・ケースで数十万円のセットバイオリンは、スプレーだろう。でもいくらくらいから?と言われると、なんとも言えないようだった。100万円の新作や、オールド(60万円くらいからある)は、もちろん手塗りだろう。
それにスプレーも手塗りも、そのなかで質の良し悪しに幅があると思う。手塗りだったら簡素にすませる場合とこだわる場合で、3倍くらい、塗る回数や乾かし期間が違うんじゃないか。
そのバイオリンを買うか・買わないかは、音の響きや、見た目・持った感触などで決めるだろう。ニスの塗られ方や配合は、情報として必要だろうか?
大島さんは、視点を、お客さん側や先生側に持つことができる人だ。また一般的な通念があることでも、筋道を立てて考えなおす。そして自分の考えを相手に押しつけない。
仕事も順調に忙しくなっており、最近は弟子?ができたそうだ。少し前に工房を訪れた生徒が「お弟子さんみたいな人がいた!」と言っていたが、残念ながらお会いできなかった。



