京都のユースホステルで3泊4日、アイ・ボディの合宿ワークショップに参加しました。
アイ・ボディとは、アレクサンダー・テクニークと、目を自然な方法で良くするベイツ・メソッドを統合させたものです。眼の使い方を原理的に見直すことで、視力低下や眼の病気、体のパフォーマンス(バイオリンを弾く)を改善することができます。
提唱者のピーター・グルンワルドは、3歳から27年間メガネをかけていました。幼い頃から吃音があり、メガネの度数も姿勢もどんどん悪くなっていきました。彼は自分自身を変えようとオーストラリアでアレクサンダー・テクニークを学んでいたとき、ベイツ・メソッドに出会いました。そして故郷のドイツでベイツ式の眼の訓練を受け、18カ月後にメガネを完全に手放すことができました。
私もアレクサンダー・テクニークを2010年から学び、レッスンに取り入れてきました。自分自身のバイオリンの弾き方も大きく変わったし、生徒たちも「私の教え方」にほかのバイオリン教室にはない魅力を感じてくれています。
アイ・ボディに関する情報は少なく、ピーターの本「アイ・ボディ 脳と体にはたらく、眼の使い方」を読むか、有志が運営しているHPを見るしかありません。(英語・独語なら詳しいHPがある) アイ・ボディはアレクサンダー・テクニークから派生しているので、「眼という器官に注力した、アレクサンダー・テクニーク」と理解しても大きく的を外してはいません。
ベイツ・メソッドの情報がほとんどないのが残念なところです。アイ・ボディの、ちょっと難しいな・やりにくいなと思う部分を、カスタマイズするのに役立つだろうと思うからです。
ピーターの本は、第2版が京都府京田辺市の図書館にあります。書庫行きにならないよう、京田辺市民の方はぜひ読んでみてください。井手町バイオリン教室には第3版があり、生徒さんへの貸し出しが可能です。
アイ・ボディを説明するのに、この本のまえがきから引用をさせていただきます。
読んでいる方が途中で脱落しないよう、省略や書き換えを行いました。
第3版のまえがき
「脳と体にはたらく目の使い方-メガネをかけずに自然に生きる」というテーマの妥当性は、今日に至るまで変わりありません。
私たちは近視・乱視・緑内障・斜視など、視覚の機能不全をかかえて生きています。そして背中や腰の痛み、日常生活の制限など、体の症状があらわれます。これらの症状と、そこから生じる感情的・精神的負担をはずして、目と脳と体の機能を改善することが、私の意図です。
テクノロジーの進化によって多様な手術が可能になりました。一見すばらしく思えますが、奥深くの原因を隠しているだけですから、新たに症状があらわれるのは時間の問題です。
アイ・ボディのメソッドを実践すると、機能不全のもとになっている原因をやめやすく、意識的に日常生活を楽に行えるようになります。メガネやコンタクトなど、うわべだけの対応は不要になっていきます。
私たちは生存反射から見るのではなく、意識的に見ることへ変化する能力を、発揮できるようになるのです。
本や合宿で知ったアイ・ボディのワークで、説明が簡単で日常生活に取り入れやすそうなことをご紹介します。既に深海みどり先生によるアレクサンダー・テクニークのレッスンで学んだこともあります。「体」における「目」という器官の比重の高さを、改めて感じました。
階段の後ろ歩き
階段を背中から昇り降りします。手すりや壁に手をそえて、安全に行ってください。体を柔らかく使いましょう。その身体感覚のまま、普通に歩いたり、バイオリン・ビオラを弾いてみましょう。
ひなたぼっこ
まぶたを閉じて顔を太陽へ向けます。かなり眩しく感じると思います。辛かったら少し向きを変えて徐々にならしてください。ほんの少し前まで、太陽の光をあびながら遊んだり働いたりするのは、私たちの日常でした。
頭部全体、頭部に奥行きがあることを、感じましょう。体全体を感じましょう。数分間、自分が気持ち良いと感じる時間の長さで。
パーミング
ひなたぼっこと交互にやります。閉じたまぶたを両てのひらでおおい、光が入らないようにします。頭部全体、頭部に奥行きがあることを、感じます。パーミングやひなたぼっこにより、視覚システム全体を意識することができ、眼精疲労もやわらぎます。屋内でパーミングだけすることもできます。
無駄に蛍光灯・LEDを浴びない
昼間 家事をしたり食事をしたり、パソコンやテレビを見るのに、人工灯は要りません。文字や楽譜を読むのも、窓際であれば要りません。
夜は暗くして過ごす
アイ・ボディの合宿ワークショップは夜9時までありましたが、部屋の電気はつけませんでした。庭に面した窓から光が漏れてくるし、話し合ったり考えたりするのに人工灯はいりませんでした。
文字や楽譜を読むのでなければ白熱灯で十分です。白熱灯は電気代がかかる? LEDが安い? 電気代と、目の健康と、どちらが大切でしょうか? 夜は寝ましょう。文字や楽譜は、外が明るいときに見ましょう。
脳で視る・頭部の奥行きを感じる
眼球の前面は光が通過しているだけで、眼球の背面は像が映っているだけです。それが文字なのか音符なのか判読しているのは、脳です。脳の視覚処理に使われる部分は「視覚野」と呼ばれ、後頭部にあります。
常に頭部の奥行きを感じながら過ごしましょう。視ることだけでなく、日常の動作が楽に感じられます。
周辺視野で視る
周辺視野とは、焦点を合わせていないけど見えている景色のことです。例えばオケで弾いていて、楽譜を読みながら眼の端に指揮者が見えているのは、周辺視野にうつっているからです。
焦点の合っているところだけでなく、周辺視野にうつっているモノを同時に視るのは、目という器官をまんべんなく使うことになります。目の健康によく、目を長持ちさせることができます。
これはいつでも行えます。パソコンを叩いているとき。調理しているとき。車を運転しているとき。周辺視野で視ている人のほうが、自動車事故を起こしにくく、指揮者を見るように叱られることがありません。
ピンホールメガネを使う
ピンホールグラスとも言います。黒いプラスチックに小さな無数の穴があけられたメガネです。これをかけると度を入れたメガネをかけたときのように焦点が合い、視覚システムを内側から訓練することができます。(テレフォンカードの穴を通して見る景色でも同じことが起こる)
目に入ってくる光線量をしぼることで焦点が合う原理なので、画面の明るさを上げるとパソコンなどでも使えるそうです。(私はムリ) 穴の大きさや形状が適切でない安物もあるそうなので注意。
メガネの度数を落とす、遠く用メガネで近くを見ない
ほどよく弱められた度数のメガネをかけると、目が働こうと努力をしだします。特に、遠くを見る用に作ったメガネを、外すのは面倒くさいからと掛けたまま近くを見ることは、目を悪くする訓練をしているようなものです。
2011年に私は、遠くを見る用メガネですべてを見る習慣をあらため、田村知則先生のところで3つのメガネを作りました。読書用・オケ用・外出用。 数か月後に読書用メガネで遠くが見えるようになり、オケ用と外出用は使い道がなくなりました。