壊れたバイオリンは、まずレッスンに持ってきて先生に見せてください。その場で直せる場合が多いからです。特に大人用フルサイズは、中古の弦を何セットか取ってあります。本体の破損がひどいか、弓の毛がどうしようもないか以外は、弾ける状態にできます。
また、バイオリン工房で修理してもらうべき度合い(すぐ行った方がいい、様子見で大丈夫、など)と、その費用も説明させて頂きます。
以下、状態別にどう対処しているかを、まとめました。
①ペグがゆるんだ、音程が狂った(下がった)
習い始めたばかりの生徒さんからのSOSが、ダントツ1位の現象です。
レッスンに持ってきていただければ直せますし、ご自分で直すこともできます。
②弦が切れた
レッスンに持ってくれば、中古の弦を張ってあげます。中古といっても、半年~1年くらい前のものです。中古の弦があるのは大人用バイオリンとビオラで、分数バイオリンは残念ながらありません。
弦の買い方も教えるので、買った弦をレッスンに持ってきて、張り方を教わることもできます。最初はきれいに張れなかったりしますが、やらなければ張れるようになりません。
弦は持ち主が交換するものですが、頻繁にすることではないので、専門家(楽器店・工房)に任せてもいいでしょう。
③弓の毛が切れた、弓の毛がボロボロ
弓の毛は10本20本切れても全く問題ありません。数本切れたり、たわんだりしたところで、「毛替えした方がいいでしょうか?」と心配そうに尋ねる生徒さんもおられますが、大丈夫です。
極論を言えば、数割残っていれば、バイオリンを弾くことはできます。といっても、そんな極端な状態の弓を使い続けることは、姿勢にも弓にも良くありませんが。
長く保管していた弓は、虫喰いなどでボロボロになっていることがあります。これは使えません。
弓の毛替えは、バイオリン工房か、職人さんが駐在している楽器店へ持っていきましょう。日時を予約をして、その場で作業してもらいましょう。大阪東部・京都南部圏で一番お勧めなのは、枚方市樟葉の工房です。(素人が作業している楽器店もあるので注意。そうした楽器店を2つ知っています。)
2020.08.20 バイオリン・ビオラ 毛替えの作業
2023.03.08 楽器店とバイオリン工房 それぞれの利用の仕方
④駒の位置が動いている、駒が傾きすぎている
わずかな違いには気づきにくく、大事に至る(駒が倒れて表板が破損する)こともあります。時々チェックして、異常があれば自分で直すか、先生に見てもらいましょう。
⑤バイオリン本体の傷、割れ、欠け
オールドのバイオリンを思い起こしてください。傷だらけです。新品の大切なバイオリンに傷をつけてしまったらショックでしょうが、少々の傷は、機能に影響しません。
慌てふためいて連絡してくる生徒さんがおられますが、話を聞くとだいたい大したことはありません。バイオリン工房に駆け込んでもいいのですが、まず先生に、写真を添付したメールなどで相談してください。修理が必要なのは、表板・裏板が割れたり、側板とのスキマが空いたときです。
私も若かりし頃、バイオリンの表板に牛乳をこぼしてしまい、青くなって職人さんに電話したことがありました。職人さんはのんびりした声で「うーん、拭いといたらー」と。「F字孔の中にも入ったかも!」「うーん、そーかー」。その後バイオリンは、とくに牛乳臭くなることもなく、今に至ります。
①~⑤までは良くあることです。
滅多に起こらないのですが、以下のような事件もありました。
⑥駒が割れている・歪んでいる
程度に寄りますが、多少の割れや歪みはそのまま使い続けることもできます。勿論ずっと放っといてはいけません。レッスンで見せていただければ、すぐバイオリン工房へ修理に行くべきか、次に毛替えに行ったときで構わないか、アドバイスできます。
⑦駒が倒れている
自分で立てられなければ、レッスンに持ってくるか、工房へ持ちこんでください。駒を立てるのは難しくありませんが、傾きや位置を決めるには少し知識がいります。最善の状態にするには、熟練の職人さんの手を要します。
駒と魂柱は、互いに押しあって、楽器の形状(丸み)をキープしています。魂柱が立ってるなら、駒も立てておいたほうがいいです。
⑧魂柱が倒れている
魂柱が倒れていると、バイオリン本体の中で魂柱が転がって、カラカラと音がします。これなんだろう?と捨ててしまわないように!
魂柱が倒れていて駒が立ってると、駒の圧で表板が割れる恐れがあります。発見したらすぐ駒も倒してください。
本来の順番は、駒が倒れる→表板からの圧がなくなり→魂柱が倒れやすくなる、です。安物の楽器ではなく、他になんの異常もないのに、魂柱だけが倒れるようなことはありません。
駒は誰でも立てることができますが、魂柱は専用の工具がなければ立てられません。位置決めも専門の職人さんでなければ無理です。大事な楽器なら、当面弾かない保管中のものであっても、直してもらいましょう。
ちなみに本体の中に、小さな綿の塊が入っていることがあります。「先生!こんなゴミが入ってました」と報告してきた生徒さんがおられましたが、ゴミではありません。綿が本体の中で転がると、ホコリを自分にくっつけて掃除してくれるため、入れる職人さんがおられるのです。私のバイオリンにも入っていたのですが、いつの間にかいなくなってしまいました。
⑨指板のはがれ、ネックの外れ
バイオリン工房で職人さんに直してもらうしかありません。滅多にないことですが、これまでに、指板のはがれは生徒さんの楽器で二度、ネックの外れは自分の楽器で一度経験しました。
最後に
数カ月以上バイオリンを弾かない場合は、以下のようにしてしまってください。
●弓の毛をゆるめる(毎回しまうときに行っている通り)
●手垢と松脂を拭く(毎回しまうときに行っているより丁寧に)
-手垢が残っていると、青カビがわいたり、顎当て金具が腐食したりします。
-松脂が残っていると、表板に溶け込んでしまったり、弦がカピカピになります。
●E線をゆるめて駒の圧を減らす