バイオリンを始めるとき、続くかわからない習い事(趣味)に、どれくらいお金をかけていいものか、悩まれると思います。
そんな大人の初心者さん・保護者さんへ、私の教室でご案内している「最初の1台」のガイドラインを、記事にしました。レッスンにお越しになられた生徒さんに渡してきたプリントの内容です。

初心者さんのバイオリン・ビオラ、子供さん2台目の分数バイオリン、また1台目の分数バイオリンでも 1/2以上の場合、下の内容に添ったものをお勧めします。
1台目で1/4以下の場合、品質にこだわっても楽器が小さいと差が出ないので、安いものでいいよと言いますが、下記のようなバイオリンを買うに越したことはありません。

何(メーカー・ブランド)を買うかより、どこで買うかが大切です。専門の楽器店・工房で買いましょう。専門の楽器店とは、『バイオリン・ビオラ・チェロ販売が事業の柱』になっているお店です。この記事は、そうしたお店で買うことを前提としています。

カテゴリ:バイオリン・ビオラの買い方

コロナ前は、良いバイオリン&良い弓&必要な品々を、10万円以内で揃えることができました。しかし昨今は物価高や伐採制限で難しくなってきています。でも中古バイオリンなら探せるし、エイジングにより新作より音質が優れていることもあります。

ビオラはバイオリンに比べ市場がかなり小さいため、バイオリンより割高ですが、注意点は同じです。

(1)バイオリン・ビオラ、弓、ケース

数万円~十数万円のバイオリン・ビオラは、楽器と弓とケースがセットになっています。

①バイオリン(ビオラ)本体

●重たいものは避けましょう。木で作られていますから個体差があります。

●専門の楽器店で買う場合、新作より中古がお勧めです。(木は水分が抜けてゆくので、中古のほうが軽くなります。)
様々な楽器を扱っている楽器店で買うばあいは、新品が安全です。
メルカリやヤフーオークションの中古は玉石混交で、お得な掘り出し物もあれば、修理代で結果的に新品より高くつくこともあります。

●ドミナント(クラスの弦)が張ってあるかは、ひとつの目安になります。ドミナントがふさわしい楽器なのに、少しでも安く提供しようと、安い弦を張っていることもあります。どのクラスの楽器にどのクラスの弦を張るか、楽器店により考え方が違います。

●見た目や触れたときの好き嫌いも、大切にしましょう。

② 弓

弓は手の延長なので、どれを選ぶかは楽器より大事です。(私のバイオリンとビオラは、楽器より弓の方が高いです。)

●買主の多くは、楽器の品定めは慎重にするけれど、弓の品定めはあまりしません。ですから、楽器の1/4~1/5ほどの値段の弓がセットにされています。楽器が6万円、弓が1万5千円、ケースが1万円、計8万5千円、といった具合です。

数万円~十数万円のバイオリン・ビオラは、楽器と弓とケースがセットになっていて、そのセット価格が表示されています。そのため楽器を選んでから弓を選び直すと、たいてい元のセット価格より高くなります。

セットは基本的に崩せない=弓を変えることはできない、のですが、専門の楽器店であれば変更できる可能性があります。

●弓の材料はフェルナンブーコがいいです。フェルナンブーコとブラジルウッドは粘りが違います。弾き比べるとブラジルウッドは頼りない感じ。しかし木材なので個体差もあります。

現在フェルナンブーコの弓は3万円くらいから。それ以下の値段の弓はブラジルウッドです。おそらく近い将来、フェルナンブーコ弓は3万円でも買えなくなるでしょう。

中古のセットは、値段が安くても、弓がフェルナンブーコのことがあります。

カーボン弓はコストパフォーマンスが高い(値段のわりに使用感がいい)です。ただし木より劣化が早く、製品としての寿命が短いです。

●弓は楽器以上に、値段と使いやすさが比例しません。ですから予算を伝えて出してもらった弓は、値段を見ないで、材質を聞かないで、弾き比べましょう。
弓の予算の目安は、楽器の値段の2割~8割(平均すると半額)くらいと考えましょう。

●中古の弓を選んだ場合、毛替えをしていないことがあります。「毛替えしなくてもまだ使える、毛替えするとプラスいくら」という場合は、毛替えしないという選択肢もありです。

③アジャスター内蔵テールピース

アジャスターとは、駒近くにある調弦のためのネジのこと。子供や初心者さんは、ペグで調弦するのが難しいため、4弦にアジャスターが必要です。

1弦に1個付けるアジャスターもありますが、アジャスター内蔵テールピースの方がいいです。理由は、弦と駒との接点が弦メーカーの設計通りになるし、1弦に1個付けるより異音につながる可能性が低いからです。

分数バイオリンや初心者向けの大人バイオリンには、大抵、アジャスター内蔵テールピースが付いています。付いていなければ、必ず付けてもらってください。

アジャスター内蔵テールピースは、ウィットナー社の製品にしてください。安い類似品もありますが壊れやすいです。専門の楽器店やバイオリン工房であれば、黙っていてもウィットナー社製にしてくれます。

④ケース

専門の楽器店であれば、ケースは好きなものを選べます。素敵なケースだとモチベーションが上がるタイプの子供には、1万円ほどでカラフルなケースもあります。
また中古楽器なら、中古のケースでよければ無料 or 格安にしてくれることがあります。

(2)付属品、ほか

専門の楽器店で買ったばあい、購入後少し時間が経っていても、楽器や弓に瑕疵があれば無料で対応してくれます。付属品なども、ものによっては無償交換してもらえます。

①肩当て

1/2以上のバイオリンには、HAYATEスタンダード が一押しです。(1/8~1/4向けの HAYATEスタンダードKidsはお勧めしません。) ビオラにも HAYATE をお勧めします。

一般的に汎用性が高いのは KUNの肩当てです。

肩当ては無料でついてくることもあります。

肩当ては、体が楽か否かを左右する道具です。合わないとわかったら、合うものを探す。合うものに出会ったら買い直す。妥協は、バイオリンの上達に大きく影響し、体を痛めることもあります。
大阪梅田のクロサワバイオリンには、試弾できる肩当てが常時20ほどあります。ビオラも10近くあります。

小さな子供さんは、肩当てが入らなかったり、肩当てをイヤがることがあります。大人でも肩当てが気持ち悪いことがあります。そうした場合はスポンジで肩当てを作ってみてください。

2023.01.18 スポンジで作る、バイオリン・ビオラの肩当て

②顎当て

顎当てはバイオリン・ビオラにくっついていますが、簡単に交換できるパーツです。

子供さんの構えが悪かったり、大人さんが弾きづらかったりするのは、顎当てが高すぎたり・形が合わなかったりするのが原因のこともあります。
楽器店で買うときに、顎当てが高すぎないか、必ずチェックしましょう。その場で相談すればフィッティングしてもらえます。(フィッティング=フィットする形のものを探す。付ける位置や高さを変える。)

合う合わないは、しばらく弾いてみないと分からないかもしれません。数カ月後であっても、教室で紹介した楽器店では生徒は無料交換してもらえています。(当教室にも低めの顎当てストックがあります。)
面倒かもしれませんが、肩当てと同じく、合わないと感じる状態を放置しない方がいいです。健康を害する恐れもあります。

肩当てや顎当てだけでなく、子供さんが弾きたがらない原因が、分数バイオリンのサイズにあることがあります。よくある身長との対比表は、骨格ががっちりした昭和の子供たち向けです。対比表から導き出したサイズではなく、本人が弾きやすいと主張するサイズを買ってあげてください。

③松脂

セットに含まれている場合もあります。1000~2000円のもので十分。
バイオリンにクロネコダークが付くことがありますが、粘りがあり過ぎます。もっと明るい色のものにしてください。

④電子チューナー

最初の1台は、メトロノーム付きの卓上型にしましょう。クリップ型は使いづらく、安い物はすぐ壊れます。

⑤譜面台

必ずご用意ください。

⑥クロス2枚

道具を長持ちさせたい・節約したいなら、しまう前に拭きましょう。手垢を拭くもの・松脂を拭くもの、2枚いります。きめが細かくて柔らかい、けば立たない綿がいいです。

2022.09.22 弦や顎当てが長持ちする、バイオリンの拭き方

⑦ミュート

家で音量が気になる場合は、音量を押さえる消音器・弱音器があります。駒の上にかぶせて振動を押さえます。2/3くらいになるゴム製、1/3くらいになる金属製があります。