経験者さんも、これらの練習がもう自分には必要のないものか、確認してみましょう。

ピアノを習い始めたとき最初にやるのはハ長調です。それは白い鍵盤だけで弾くことができて、体と頭が一番 楽だからです。

バイオリンで最初にやるのはイ長調。体と頭が一番 楽だからです。高いほうの2本の弦で、ドレミファソラシドと簡単な曲が弾けます。子供が聴きやすい音域だからでもあります。

聴きやすい音域は年齢とともに下がるので、大人の初心者さんは、ニ長調を先にするのがいいかもしれません。
運弓はイ長調よりニ長調のほうが易しいです。真ん中の2本で、ドレミファソラシドと簡単な曲が弾けます。

私のレッスンでは、子供にも早いうちからニ長調を弾かせ、大人はイ長調とニ長調をします。相対音感も付きます。
音楽を仕事にするのでなければ、バイオリンを弾くのに絶対音感はむしろ邪魔です。アマチュアとして音楽を楽しむなら、相対音感が役に立ちます。


連番を打っていますが、やる順番は生徒さんにより様々です。全てをやるわけではなく、理解度が高ければしないものもあります。

⑥以外、上がる指番号しか書いていませんが、下がるのもセットで行います。

2オクターブのとき中間のドを弾きなおすのは、調性感を失わないようにするのと、偶数の音符群は ПVПV で弾くことを覚えてもらうためです。
ドを弾きなおさないスケールに安易に慣れてしまうと、弾いている途中で調が変わったりします。

バイオリン初心者さんの、目的別スケール練習

①最初にやる、肉体的に一番楽なスケール

A線から 01230123 32103210
D線から 01230123 32103210
G線から 01230123 32103210

※3パターンのどれに重点を置いて練習するかは、生徒さんの肉体的な得手不得手をみて判断します。

<効能>
●0123で音が1つづつ上がり、3210で下がることが、理解できる
●どの指に移るときフォームが崩れるか、指摘に自覚することができる
 (何ができていないか自覚するには、具体性がいる。)
●音と音の間隔は、指がはなれている時と、くっつく時があると理解できる

②左小指を使うスケール

A線から 12341234 43214321
D線から 12341234 43214321
G線から 12341234 43214321

<効能>
●3と4がくっつくため、小指が置きやすい
●123を等間隔で開く練習になる
●小指を早くデビューさせることで、フォームが整う
●ミファとシドは、指がくっつくと理解できる
 ドレミファとソラシドは、音と音の間隔が同じであると理解できる(どこのポジションへ行ってもスケールが弾ける)

※3の指を、3のテープと4のテープの間に置くことになるため、思考に混乱が起きることがあります。

 ①→②と進めない場合は、①の途中の0を4にしたスケール練習をはさみます。


A線から 01234123 32143210
D線から 01234123 32143210
G線から 01234123 32143210

③4弦使った、2オクターブのスケール

※2オクターブのスケールは、1オクターブづつ、上がって、上がって、下がって、下がります。
 1オクターブ上がったところの「ド」で止まり、再度「ド」から2オクターブ目を弾きます。

G線から 01230123 30123012 21032103 32103210

<効能>
●弦によって、2の指を置く場所に違いが出ることが理解できる
●弦によって2を、3に寄せたり1に寄せたりすることが理解できる
●いろんなドレミファソラシドがあると理解できる

④ハ長調のスケール 1オクターブ目

※ピアノの鍵盤を見ながら、一緒に弾きます。

G線から 30123012 21032103

<効能>
●2が高かったのは、シャープが付いていたからだとわかる

⑤ハ長調のスケール 2オクターブ目

A線から 23012344 44321032

<効能>
●E線の1は、シャープが付いていたのだとわかる
●0と1の間にも、音があったとわかる


⑥ハ長調のスケール フルコース

※2オクターブ上がって2オクターブ下がったところでは、まだG線の012を使っていません。続けてG線上でドシラソラシドと弾きます。

G線から 30123012 23012344 44321032 21032103 3210123

<効能>
●4弦✕4指 全箇所の、ナチュラルの場所がわかる
●楽譜を読んで、音を出すことが出来るようになる
 知らない曲でも弾けるようになる
 耳を使ってなんとなく弾いていた曲の、音程があやしい箇所を、自力でチェックできるようになる

※私の教室でバイオリンを始めた方すべてに、これをやってもらいます。ピアノをしていた、楽譜が読める、絶対音感がある、といった生徒さんは、早めにやります。


⑦行きは0で帰りは4

①~⑥を、上がるときは0、下がるときは4で弾く。

<効能>
●0=4だとわかる

※2年生から5年習ってスズキ3巻を弾いていた子が、0=4が理解できていないと判明したことがあります。油断禁物。基礎練習をイヤがるので、スケールはあまりやらせていませんでしたが、やっぱり大事でした。


⑧フラット系の長調のスケール

<効能>
●1が下がるのはE線だけでないとわかる
●どの指もだんだん下がってくると分かる
●調号を見て、左指を置く場所のイメージが作れるようになる

⑨短調のスケール

※長調が、脳と体にしっかり入ってから、行います。