大人の生徒さんは真剣です。自分の意志で来ているからです。みな真剣なのに、先生は同じなのに、上手になっていく生徒さんと、そうでない生徒さんがおられます。
「年齢」「才能」は変えようがないので仕方ありません。それ以外の、命運をわける要素は何でしょうか。
♫ 二度、同じことを言われない
上手になっていく生徒さんは、前回のレッスンをふまえ、家での練習方法を変えてきます。そうなると、悪い癖が直っていなかったとしても、先生の言うことは同じになりません。
2022.10.28 複数のすすめ
レッスンでは、前回アレをやったから今回はコレ、という大筋の計画はありますが、今どうなっているか?を一番大切にします。今を見て、前回と同じアドバイスが浮かぶということは、生徒さんが変化していないということです。
以前も書いた話です。
コロナ第一波で3カ月レッスンをお休みした生徒さんは、戻ってきたとき上手になっていました。どんな練習をしていたのか尋ねたら、鏡に向かって弾いていたそうです。コロナ直前のレッスンで、鏡を使った練習方法を、彼女に教えていたのです。彼女はそれを3カ月、いつレッスンが再開できるか分からない中で、愚直に続けていたのです。
♫ 自身の変化を感じとるセンサーを磨く
上手になっているのに、生徒さん自身が、ご自分の変化をキャッチしていないことがあります。
また前回言われたとおりに練習したのだから、変化しているに決まっている、と思い込んでいることもあります。
生徒さんは、自分を毎日見ているから変化がわかりにい。先生は日を空けて見るので変化がわかる。という側面もあります。
自分の変化を感じ取れるほど、上手になるための施策がみずから打てます。自分が前進していることが分かれば くじけず練習を続けられますし、効果を感じられなかったら止める勇気も持てます。
左指の押さえ方が良くなった生徒さんに、前回に比べて良くなりましたね、と声をかけたら、前回レッスンで教わった練習をしていたとのこと。ただ自分が良くなっている、という自覚はなかったそうです。今後レッスンを重ねるうちに、センサーも磨かれていくでしょう。
左手首の角度に変化のない生徒さんに、同じアドバイスをして、まだ直ってませんか?と言われたこともあります。直ったつもりでいたのです。左手首は見えないので分からないのです。
♫ 練習時間は、日常生活に組み込む
バイオリンの練習時間は、日常生活の予定のなかに組み込むのがいいです。食事や仕事のように、曜日や時間帯を決めて練習時間を確保しましょう。
毎日できない場合でも「時間があったら練習する」ではなく、残業が19時までに終わった日は弾く、お皿洗い当番でない日は弾く、など明確に条件を決めましょう。
イレギュラーなことが起こりやすい人は、予定を決めにくいかもしれません。でも何らかのルールは作れると思います。とくに子供は、1日のタイムテーブルが、日によって大きく変わらない方がいいと思います。
私のレッスンでは、バイオリンを弾いていない時間にできる練習を教えています。それも、いつその練習をするのか、決めてしまうのが効果的です。
♫ 集中した質の高い練習を、短時間・多回数
短い時間、毎日練習するのがいいのです。1日2回練習するのもいいです。1テイクづつ、なにを課題とするのか、目的意識を持ってやりましょう。
早く上手になりたいばかりに長時間練習して、体を痛めてしまう生徒さんが時折おられます。よい演奏フォームが作れていない状態での長時間練習は、故障するためにやっているようなものです。自分の体に対するセンサーがあれば、なにかおかしいな?と痛める前に気づくこともできます。
♫ 自分の機嫌をじょうずに取る
毎日30分練習する!と決めたとき、週に何回サボったら自分を叱るかは、人によって違います。
自分は下手だ、自分は頑張れない、と責めてばかりの人は、上達しません。甘やかしていても当然上手になりません。練習したくないときの声かけ、練習したときのご褒美など、自分に最適な接し方をしましょう。
通し練習をするときは一喜一憂しない。ミスしても成功しても、それに対する「感情」は過去においていき、眼前にある音符を弾くことに集中しましょう。
♫ レッスンは一定の間隔で受ける
レッスンを受けるなら一定の間隔で通うのがいいでしょう。週1がベストですが、そうでなくても構いません。教える側からしても、一定の間隔でおいでになる生徒さんの方がだんぜん教えやすいです。
練習ができていないときも休まず、先生に練習できていないと伝えましょう。それは言い訳ではなく、よりよいレッスンを受けるための状況説明です。
レッスン間隔は常に、自分でコントロールしましょう。レッスンに通うことがマンネリ化してきたと思ったら、思いきって暫く休むのもありです。先生に合わせるのではなく、自分はこういうタイプだから、こういう性格だからと理解してもらう努力をし、先生に自分仕様になってもらいましょう。
♫ 書く。消す。鉛筆は常に携帯
レッスンで琴線に触れたことをサッと書く生徒さんは、ほぼ間違いなく上手になります。
レッスン直後に、忘れてはならじと書き出す人も、います。先生の家の前で、駐車場の車の中で、帰りの電車の中で。
書き方、書く内容は、自分にわかればいいです。後から読み返して思い出せればいい。
もちろん記憶できることは書く必要はありません。特にレッスン中は、憶えておけることは書かない方がいいです。その分 気が散ります。書く時間もムダです。
私は自分の先生から、「書くな、その場でおぼえろ」と言われたことがあります。(プロ向けのレッスンです)
私が子供のときレッスン中は、母親が手元でメモを取っていました。家に帰ると母は、黒鉛筆・赤鉛筆・青鉛筆を使ってきれいな字で楽譜に書き込みました。
アマオケの練習では、指示されたことを楽譜に書き込みます。鉛筆を持っていないと、厳しいオケでは注意されます。
楽譜への書き込みは、情報が不要になったら、「消す」作業を行うとなおいいです。
とくに指番号、音程の高い低い、指のくっつくはなれる等。左指の情報を消す効果は絶大です。情報を消した譜面を見ながら弾いているうちに、情報なしで読めるようになります。
♫ 常に改善をこころがける
バイオリンの練習の仕方、日常生活への組み込み方、レッスンの通い方。
いずれも常に改善、微調整してゆきましょう。