「肩甲骨はがし」って最近テレビやネットでよく聞きます。肩こりや四十肩など、肩甲骨まわりの辛さを解消するために、肩甲骨とその周りの筋肉をはがすための体操やマッサージのことだそうです。
肩関節・肩甲骨のしなやかさは、バイオリン・ビオラの演奏に大きく影響します。肩当て過敏症 にも関係します。
①肩甲骨まわりの筋肉をイメージしよう
肩甲骨の表側
には、棘下筋(きょくかきん)があり、そのさらに表側には 僧帽筋(そうぼうきん)があります。
棘下筋 は、肩甲骨の表面の背骨寄りに起始し、上腕骨に停止しています。起始部が肩甲骨の表側にべっちょりくっついているか、はがれやすいかで、腕のパフォーマンスが違ってきます。
起始部と停止部を知ると、筋繊維の方向がイメージできます。「くっついてる」「はがれてる」は、骨付きチキンを食べるときの肉のはがれやすさをイメージしてください。
僧帽筋 は、背中上部に大きくダイヤモンド形に広がっている筋肉です。頚椎と胸椎に起始し、鎖骨と肩甲骨に停止しています。首から腕への連動のカギを握っています。
肩甲骨の裏側
には、肩甲下筋(けんこうかきん)があり、そのさらに裏側には 前鋸筋(ぜんきょきん)があります。
肩甲下筋 は、肩甲骨の裏面の背骨寄りに起始し、上腕骨に停止しています。前述の棘下筋と肩甲下筋で、肩甲骨をサンドイッチのようにはさんでいるわけです。(ただし具よりパンの方が小さい。)棘下筋と同じく、起始部が肩甲骨の裏側にべっちょりくっついているか、はがれやすいかで、腕のパフォーマンスが違ってきます。
棘下筋と肩甲下筋は、ローテーターカフと呼ばれる肩関節4つの筋肉群の2つで、スポーツ界で重要視されています。
肩甲下筋の内側にあるのが、前鋸筋 です。前鋸筋は、肋骨の側面にヒトデのような形で起始し、肩甲骨の背骨側 側面に停止。こんな面妖な形状をしている筋肉はほかにありません。
前鋸筋 は、バイオリン・ビオラを弾くために腕を動かすときのカギとなる筋肉です。現代人(私を含む)は様々な便利なものに囲まれすぎて、前鋸筋がビビッています。
②肩甲骨をしなやかにするには 取組の考え方
体の状態を変えていくには、足し算と引き算の取り組みが必要です。
足し算
体の使い方を変えようと顕在意識で考えるのは、すべて足し算 的な手法です。簡単に言えば「こうしよう」と思うことを指します。弓の角度を変えよう、小指をまあるくしよう、など。
色んな手法やノウハウがありますが、例えばアレクサンダーテクニークで教わったこんな話があります。
「ピンクの象を、イメージしないでください」と言われても、実行できませんね? 「ピンクの像」と言われた時点で、脳裏にピンクの像が浮かび、それを消し去ることは容易ではありません。脳とはこういう働きをする、ということを理解し、それを逆手に取って、課題へアプローチするのです。
ピンクの象をイメージしない、いくつかのアプローチ法を紹介しましょう。「青い象をイメージする」。めちゃんこベタなやり方ですが、「ピンクの象をイメージしない」ことは達成できました。
ほか「聴こえている音を、ひとつひとつ種類ごとに分けて聴く。時計のカチカチいう音、外を通る車の音、自分の息の音。」
聴覚に集中すると、視覚的なこと(ピンクの象)を忘れます。同系のやり方に「匂いを感じる」「肉体に触れているものを感じる」などがあります。
意識を使った足し算とは、脳との知恵比べとも言えます。
引き算
体の動きを阻害するものを、体から遠ざけるだけです。何を遠ざけたらいいのか分からない人は、タグ「日常生活でできること」の記事を参考になさってください。
私はなんにでも過敏に反応してしまう体質ですが、特に電磁波・地磁気から影響を受けやすいようで、重点的に引き算を心がけています。バイオリンを弾くというのは非常に繊細な行為なので、日常生活において影響を感じなくても、バイオリンを弾くとわかります。
食べ物も変えてきましたが、体に悪いものから良いものへ変えたときより、良いものを食べていて悪いものを食べたときのほうが、分かりやすいです。
最近の私は、甘いお菓子を止めました。止めたといっても、量的に5を1にしたくらいです。ごほうび的なのは止め、本当に食べたいと思うときだけにしました。普段甘いものを食べていない体で、甘いものを食べると、変調がよくわかります。
年末はクリスマスにケーキを食べ、生徒さんからクッキーをもらって食べました。するとバイオリンを構えても、自分がどこに弓を置いてどんな角度で引っぱっているのかサッパリ分からなくなりました。
もちろん4歳から何万時間もさらってきたバイオリンは、強固な「習慣」があるから弾けてしまうのですが、私が今取り組んでいるフォームの修正のための現在情報は、一切、感覚器官から脳へ上がらなくなりました。
③肩甲骨をしなやかにするには 取組の内容
足し算も引き算も、なにが効果的かは人それぞれです。Aさんに効いたものが、Bさんに効くわけではありません。体質に合う漢方薬を探すように、自分仕様を探してみてください。