テニスをしていたとします。
飛んできたボールをラケットの真ん中に当てるには、手からラケット中央までの距離が正確に把握できていなければなりません。
同様に、自分の腕の長さも正確に掴めていなければなりません。
自分の腕の長さ? そんなの分かってるに決まってるじゃない。と思うかもしれません。しかし現実にボールは、ラケットの真ん中になかなか当たってくれません。
私たちの脳には、自分の体について、大きさや長さや位置を認識している地図があります。これをボディマップと言います。ボディマップは顔面や指が肥大化していて、実際の体のサイズバランスと一致していないのです。
ホムンクルスという、脳の部位と身体の機能の対応関係をまとめた図があります。ネットで検索してみてください。京田辺市の図書館にあるボディマップ/アレクサンダーテクニーク関連の本にもありました。
脳のボディマップと実際の体が多少違っていても、日常生活ではさして問題にはなりません。せいぜい家具に膝をぶつけたり扉に指を挟んだりする程度なのですが、その原因は、脳が体の大きさや形状を正しく認識していないからです。
しかしスポーツや器楽には、わずかなズレが大きな違いをもたらします。バイオリン・ビオラの演奏には、精度の高い体のコントロールが必要です。ボディマップの歪みが大きい状態で反復練習をしても、上手にはなりません。
ボディマップを鍛えるには、全身を使った外遊びが有効です。野山での鬼ごっこなど最適です。地磁気も高く、脳への酸素供給もたっぷりできます。
といっても現代社会の大人が「野山での鬼ごっこ」をするのは困難。今の自分の生活の中でやれることを考えるしかありません。
バイオリンに生かすレベルのボディマップの訓練は、独学では難しいです。ボディマッピングやアレクサンダーテクニークの先生を探して、一度レッスンを受けてみてください。抽象的な概念で、先生の教え方も様々なので、本も先生も一冊・一人ではなく、複数当たってみることをお勧めします。
音楽家向けに書かれたアレクサンダーテクニークの本は、音楽の先生が執筆していることが多いのですが、実際にレッスンを受けようと探してみても身近にはなかなかおられません。しかし先生を探すにあたって、音楽家の悩みが分かっているか否かは、そう大切なことではありません。
ちなみに京都・奈良でレッスンが受けやすい音楽家 且つアレクサンダーテクニークの先生には、ソプラノの川井弘子先生、ピアニストの矢崎みずほ先生などがおられます。
私のバイオリンレッスンも、かなりボディマッピング(アレクサンダーテクニーク)の要素が入っています。
生徒さんのバイオリンを弾いている姿を見ると、知覚が薄い箇所がわかります。そこを観察するに示唆すると、バイオリンが弾きやすくなったりします。
簡単な曲・エチュードなどを弾きながら、右肩と左肩を感じてみてください。どちらも同じくらい、感じることができますか? 左右対称なはずですが、左右対称に感じられますか? 高さは同じでしょうか? 体のセンターからの距離は同じでしょうか?
左肩が高い気がする・・右肩が遠くにある気がする・・など自分の感覚と現実が一致しているか、鏡やビデオで確認してみましょう。鏡は手軽ですが、思い込みの入る余地があります。ビデオは残酷なほど現実を映し出します。バイオリン・ビオラが上手になりたかったらビデオを撮りましょう。