夏は、バイオリンの演奏フォームを見直す、絶好の季節です。体の動きが見えやすいからです。
日常生活で体を使うとき誰にでもヘンな癖(不要な習慣)があります。それはバイオリンを弾いているとき、より一層顕著に出現します。バイオリンは体のヘンな癖を明るみに出してくれる、とも言えます。不要な習慣を発見し、手放すには、
①先生に見てもらう
②鏡を使う
③ビデオを使う
といった方法がありますが、最も現実を直視させられるのは③ビデオです。鏡に比べるとちょっと面倒ですが①ほどではありません。バイオリンの先生に連絡を取り、日時を決めて出かけるのは結構大変ですし、レッスン代もかかります。
①先生に見てもらう
先生に教わる良いところは、解決策も提示してもらえることです。②③だと解決策は自分で考えねばなりません。
自分の先生が、体の使い方に詳しくないときは、アレクサンダーテクニークなどの先生を探してもいいと思います。
②鏡を使う
鏡は、手軽に自分の演奏フォームを客観視できるツールですが、見たい方向から見ることができません。自分の弓が直角になっているかを確認するのも難しく、楽譜から眼を離せないときは使えません。
2枚の鏡を使うと、後方からの姿勢を確認することもできますが、見える角度の調節をするのに時間がかかります。
鏡は使い方次第です。効果的な使い方を以下の記事で紹介しています。
2020.06.23 家での練習 マストアイテムとその使い方
③ビデオを使う
ビデオカメラでもスマホでも、自分の姿を撮るにはスタンドが要ります。
私の持っているのは、セルカ棒(自撮り棒)に三脚スタンドが付いた、YUNTENGというメーカーのものです。送料込みで1880円でした。支柱を折りたたんだら全長21cm、伸ばしたときの高さが102cmです。倒れないよう少し注意が必要な感じです。これより安物なのは、止めたほうがいいと思います。私はこれよりいいもの、もっと高さが伸びるものを買っとけばよかったかな、と思っています。
bluetoothでリモート操作ができるとありますが、同じものを使っている友人によると、試したけどよく分からなかったそうです。値段的に仕方ないでしょう。
スタンドを買う前は、タンスの引き出しを少しあけてスマホを置いたりもしていました。バイオリン上達のための道具として、スマホスタンドは節約するところではないと思います。
パソコンに入っている「カメラ」というアプリでも、ビデオは撮れますが、あまり鮮明ではありません。(鮮明にできる設定もあるのかな?) このアプリで映像や写真を撮ると、カメラロールというフォルダに自動的に保存されます。
バイオリの奏フォームを形作るのは、手や指、腕などだと思われていることでしょう。実際これらの部位についての正しい理解は必要です。
しかし手や腕を、「今の形」から「理想とする形」へ変えようとする努力より、体幹を修正するほうが、実効性は高いです。体幹がよければ、手や腕はそうなってくれます。
頭も冴えます。体幹がよいときは、すらすら譜読みができます。楽譜が読めないときは、体幹が歪んでいる、と判定してもいいかもしれません。
体幹がいいときの弾きやすさには、格別なものがあります。これを味わうと、困難な道のりでも頑張ろうと思えます。
体幹をチェックしたいときは、正面から撮ってもいいのですが、背中からがオススメです。正面からだと左肩がバイオリンの陰になり見えないため、想像力でおぎなえる能力が要ります。
また、夏服は体の動きが見えやすいと書きましたが、パンツ1枚で撮るとなお良いです。肩甲骨の動きがよく見えるし、腰・腹・胸のバランスを確認できます。
撮影するビデオの長さは、体幹の修正が目的なら1テイク20~50秒。気をつけたことの結果を確認し、次の課題を決めます。数回さらってから撮ることもありますが、たいていすぐ次のテイクを撮ります。
撮らないテイクも、1回1回バイオリンを降ろして、イメージの仕方を変えたり、軌道修正しながら行います。
立ち位置を変えたり、立ったり座ったり、あちこち曲げたり、最上の解を見つけるために体を動かします。素材もどんどん変えてゆきます。煮詰まってきたらトイレに行ったり、小さな用事を挟みながら続けます。発見したことを楽譜に記したり手帳にメモったり。思いついたことを生徒のカルテに書いたりします。
集中力が薄まったと感じたらサッサとやめます。無意識に弾きつづけると、体は歪んできます。そのまま弾き続けると、歪んだ弾き方が定着してしまいます。
バイオリンの練習は、だらだら長くやるより、「30分を毎日」というように小まめに行うのが効果的です。体幹を修正する練習は、さらに短い時間で、回数を多くやるのがいいです。時間の長さや回数は、自分に合ったものを見つけてください。
エアコンはいろいろな意味で体を動きにくくするので、朝の時間に扇風機でやります。会社員時代は、出社前に朝練をしていました。1日使える日だったら、朝練をして、午前練をして、午後練をします。
夜しか時間が取れないばあいは夜練習するしかありませんが、蛍光灯/LED灯の元では眼に負担がかかります。くたびれた状態の夜30分より、朝の集中した10分の練習のほうがいいと思います。
2022.06.21 眼とバイオリン