大阪には「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」という大変ユニークな国際コンクールがあります。1993年にスタートし、3年に1度開催されてきました。直近では2020年がコロナによりキャンセルとなりましたが、2023年の開催を目指して募集が始まりました。

いわゆるコンクールは、国内コンクールと国際コンクールに大別されます。

♫国内コンクール

で最も知られているのは、年末にNHKで放映されている日本音楽コンクールでしょう。ピアノ部門/バイオリン部門/声楽部門/作曲部門は毎年。チェロ/ホルン/クラリネット/トランペット/オーボエ/フルートは3年に1度です。

2012年のバイオリン部門では、京田辺市三山木の周防亮介くんが2位に入っています。初めて彼を見たのは、彼が中学3年生のとき。モーツアルトを2曲聴きましたが、熟成した高級ワインのような演奏でした。亮介くんがバイオリンを始めたのは7歳だそうです。未就学から始めなくてもいいのです。もう周防亮介さまとお呼びした方がいいかもしれません。

バイオリンに特化した国内コンクールでしたら、関西弦楽コンクールというのがあります。私の生徒も出ています。

また京田辺市のピアノの先生方が、2021年から京田辺市音楽コンクールというのを立ち上げています。コロナ下でスタートするとはすごい気合いです。私のバイオリン・ビオラ教室で、いつもピアノ伴奏をお願いしている金原佳子先生も、運営に加わっています。

♫国際コンクール

で最も有名なのはショパン国際ピアノコンクールだと思いますが、これはその名の通りピアノ部門だけです。チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールは、ピアノ部門もバイオリン部門もあります。

チャイコフスキー国際コンクールで、諏訪内晶子が優勝したときの演奏が、近年youtubeで見れるようになりました。バッハのシャコンヌは鳥肌もの。会場の空気感が、もはや誰も彼女をコンテスタント(コンクールに挑戦する者)と見なしていません。

♫大阪国際室内楽コンクール&フェスタ

のコンクール部門は、2つあります。

第1部門は弦楽四重奏。1stバイオリン・2ndバイオリン・ビオラ・チェロの編成によるカルテットです。

第2部門は、ピアノ三重奏/ピアノ四重奏、または管楽アンサンブルとなっています。ピアノ三重奏とは、ピアノ&バイオリン&チェロの編成を指します。ピアノ四重奏はピアノ&バイオリン&ビオラ&チェロです。

そしてこの国際コンクールのユニークなところは、コンクールとは別にフェスタという部門をおいているところです。これは「2~6人の器楽演奏」という決まりがあるだけで、楽器の選択はまったくの自由です。年齢制限や課題曲もありません。

ですのでバイオリンとピアノとクラリネットの三重奏とか、打楽器アンサンブルとか、ピアノデュオ等さまざまな編成の団体がエントリーしています。

また伝統音楽・民族音楽を歓迎しており、見たことも聴いたこともないような楽器や演奏も登場します。極東という立地もあるのか、ロシアや東欧からのエントリーも多いです。この部門ではバラライカやドムラはメジャー楽器の範疇です。

フェスタ部門の順位は、公募による一般審査員の投票により決まります。このフェスタ部門のユニークさにより、「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」は世界でも類を見ない音楽祭となっています。

私は第4回から審査員に応募し、その後もちょくちょく客席で演奏を堪能させてもらってきました。見たこともない民族楽器の、それも本格的な演奏が聴けるのが、本当に楽しみでした。

プロ審査員ではない平民?の審査員は、時間の経過とともにだんだん飽きてきて、眠たくなります。そのため出場順が早い団体や、休憩直後の団体のほうが平民審査員たちはよく聴いており、評価が有利になる気がなんとなくしていました。主催サイドもそう感じたのか、投票の仕方は参加の都度、徐々に変わってゆきました。

♫情報誌「奏(SOU)」

このコンクール&フェスタの主催は、「日本室内楽振興財団」というお方です。「室内楽に取り組む優秀な音楽家を世界に広く求め、優れた演奏を顕彰し、人材を育成する」財団なのだそうです。

そのお方が最近、「奏(SOU)」という広報誌を送ってきてくれるようになりました。最新号は vol.57 とか書いてあるので、以前からあったのでしょう。コロナの危機感により、なんとかコヤツ(中川恵)にコンクール&フェスタへの興味を持続しといてもらわんと!とでも思ったに違いありません。

んで、この冊子が面白いのです。申込めば誰でも無料で送ってもらえるそうです。話が長くなりましたが、そのことが言いたくてブログ記事にしたのです。

今回の vol.57 の内容は特に良かったので、簡単に内容をご紹介したいと思います。

●打楽器集団「男群」に聞く!
 フェスタに何度か出場している打楽器アンサンブルのインタビュー。私も聴きましたよん。

●クラシック音楽とマンガ
 クラシック音楽を題材にした、今どきのお勧めマンガが紹介されています。

 Bowing! ボウイング
 自然のなかにある中学校を舞台に、中学生たちと大人が弦楽四重奏を組むことになるお話。

 四月は君の嘘
 神童だったピアニスト男子とバイオリニスト女子が出会い、デュオを組んで挫折を乗り越えてゆく話。

 青のオーケストラ
 こちらも天才肌の男子が主人公だけど、部活のオーケストラが舞台。高校のオーケストラ部を取材したそうです。

 四月青のも中学3年生の設定。主人公が中学生ばっかりや~。これらの作者さんたちは中3がまだリアルに感じられる年齢で、あえて中3を選んだのだろうと思う。ファーストガンダムのアムロ・レイも15歳でした。


●室内楽奏者あるある
今回はピアノトリオ(ピアノ&バイオリン&チェロ)が取り上げられています。

●楽器工房探訪
ヤマハのグランドピアノ工場を訪ねています。

●世界の音楽  アンサンブル事情
フェスタに参加した和楽器カルテットが、記事になっています。

●音の出し方  似た者同士
西洋のクラリネット・日本の尺八・民族楽器など、息を吹き込む楽器同士を比べて考察しています。

●世界のコンクール:ウィグモアホール国際弦楽四重奏コンクール

ピアノやバイオリン、管楽器や歌など、ソリストを対象とした国際コンクールはいっぱいありますが、器楽合奏のコンクールは少ししかありません。それも弦楽四重奏が主で、それ以外の編成によるものは皆無と言ってもいいくらいです。「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」のフェスタ部門というのは、世界的に見てもすごいのです。

英国ウィグモアホールのコンクールは、当初バイオリンコンクールが想定されていました。ところが主催者がたまたまメニューインに相談したところ、メニューイン卿が弦楽四重奏のすばらしさを語りコンクールの重要性を説いたため、弦楽四重奏のコンクールになってしまったそうです。
知名度は「バンフ国際弦楽四重奏コンクール」「パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクール」などの方が高いと思うのですが、ウィグモアホールの方が歴史が古く、先駆者なのです。

で、メニューイン卿はそればかりか、「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」が相談に行った際、(アジアの日本でするなら)伝統楽器や民族音楽も紹介しては?と助言し、フェスタ部門の創設につながったらしいです。

といったことが「奏」には載っています。どうです、面白いでしょう? コチラから申し込めますよ。