京都府井手町の図書館にて、素敵な本を見つけました。
「老後とピアノ」稲垣えみ子

「ピアノ」という箇所を「バイオリン」に置きかえて読んでみたら、あら不思議。バイオリンに四苦八苦する大人の話になりました。

1章 40年ぶりのピアノ 
2章 弾きたい曲を弾いてみる
3章 動かぬ体、働かぬ脳
4章 ああ発表会
5章 老後とピアノ

目次を見ただけで、身につまされる生徒さんがおられるのではないでしょうか。動かない自分の体と向きあうくだりは、バイオリンでも参考になります。

「老後とピアノ」のなかに登場する『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』という本は、アレクサンダーテクニークから派生した「ボディマップ」という手法によるもの。

バイオリニストには、『ヴァイオリニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』という本もちゃーんとあります。バイオリンやビオラを弾くには体が動かなければダメだ、ということに気づいた生徒さんも、持ってらっしゃいます。

しかしこの本だけで自習を試みるのは難しいです。読んでみたらわかります。アレクサンダーテクニーク/ボディマップの講習を受けられるか、アレクサンダーテクニークを知っている音楽の先生のところへ行かれるのが早道です。

アレクサンダーテクニーク/ボディマップの指導は、ピアノやバイオリンの先生がしていることもあります。私が師事した深海みどり先生の門下生にも、ピアニスト兼アレクサンダー講師の方がおられます。私もアレクサンダーの講師にならないかと声をかけられました。

アレクサンダーテクニーク/ボディマップは、やり方によっては効果がなかったり、かえって体を痛めることもあります。私も、穴に落ち込んで身動きが取れなくなった時期があり、深海みどり先生に助けていただきました。中途半端な取り入れ方には注意が必要です。

さて稲垣さんは、プロのイケメンピアニスト米津真治(ヨネヅタダヒロ)さんに習うのですが、文中に、米津先生から教わる指の体操があります。

挑戦してみました! そのビデオをこちらに掲載しています。
2022.07.12 バイオリン・ビオラのための 指の体操

バイオリンとピアノでは少し違う点もあります。

①バイオリンは、体が動かなければ音が出ない
ピアノは猫が歩いても音が出ますが、バイオリンは「弦に対して、直角に弓を引く」という行為ができなければそもそも音が出ません。体が動くことの優先度/重要性が高いのです。
稲垣さんが体と向きあうくだりは、本の真ん中を過ぎてから出てきます。5章だて構成の、第3章です。これが「老後とバイオリン」という本だったら、トップバッターの章でもいいと思います。

②楽器の手入れを自分でしなければならない
ピアノの調律を自分でする人はいませんが、バイオリンの調弦は自分でしなければなりません。ピアノが弾けなくなるような楽器トラブルは滅多に起こりませんが、バイオリンは起きます。ペグが戻ったり、駒が動いたり、弦が切れたりします。
「老後とバイオリン」だったら、このテーマで1つの章が書けそうです。

バイオリンの手入れは、昨今ネットで調べることもできて、自分ですることもできます。しかし、そういう事態に対応してもらえる専門家(先生/楽器屋さん/職人さん)を捕まえておくのが手っ取り早いです。治してくれるだけでなく、やり方を教えてくれる人にしましょう。

稲垣えみ子さんを一躍有名?にしたのは、朝日新聞のコラム欄でした。私はその第1回目の記事をリアルタイムで読みました。題材は、自分の髪型をアフロヘアにしたこと。ウイットに富んだ暖かい文面の横に、ほわほわのアフロヘアの写真。なんて素敵な記事を書く人なんだろう!

この記事の反響が大きかったからか、稲垣さんのコラムは朝日新聞に定期的に載ることになります。後から知ったところでは、第1回目の記事は、そーとー悩んでテーマを選んだようです。

2回目からは、地球環境や肥大化した社会システムに対する鋭い切り口の内容に、ガラリと変わりました。文面から放たれる危機感・切迫感は私と通じるものがあり、文責イナガキエミコの記事は見つけたらかかさず読みました。

数年後でしたでしょうか、退職しますとの報告がコラムに載りました。彼女のような感性の持ち主は、大組織には居づらかったことでしょう。
私は応援していると伝えたくて、朝日新聞あてに短い手紙を出しました。私などが出さなくても、全国から沢山の声が寄せられたと思いますが、稲垣さんからは律儀にも自筆のハガキが返ってきました。