(1)「身長」による分数バイオリンのサイズ選び

分数バイオリンのサイズ選びは、判断の目安として「身長」がよく使われます。
スズキバイオリンが出している対比表が有名です。

110~115cm 1/8
115~125cm 1/4
125~130cm 1/2
130~145cm 3/4
145cm~   4/4

これは昭和の前半に作られた表なので、いまの子供たちの体格を考えると、そのまま当てはめない方がよいと思います。この表より少し小さめが、持ちやすい分数バイオリンのサイズになると考えましょう。
私は身長だとあまりピンと来ないので、年齢 生まれ月をお伺いして貸し出しサイズを選び、お会いしたときは体格や身体感覚を見ます。(「身長」より「年齢」で判断するほうがよい、ということではありません。)

(2)「年齢」による分数バイオリンのサイズ選び

私のバイオリン教室の子供たちはおおむね以下の感じです。かなり個人差があり、同学年で2サイズ違うこともあります。
2020年度 学校保健統計調査による平均身長データも併記してみました。8歳までの身長データは、男子と女子の身長差が1cm未満でしたので、その間の値を四捨五入しました。

5歳 111cm 1/10~1/8
6歳 117cm 1/8
7歳 123cm 1/8~1/4
8歳 129cm 1/4
9歳 135cm 1/4~1/2

女子
10歳 142cm 1/2~3/4
11歳 148cm 3/4~4/4
12歳 153cm 4/4
13歳 155cm
14歳 157cm

男子
10歳 140cm 1/2
11歳 147cm 1/2~3/4
12歳 154cm 3/4
13歳 161cm 4/4
14歳 166cm

男子より女子の方がサイズアップは早めにしていきます。男子は体格が完成する年齢が遅いからです。最終的に到達する体の大きさも考慮します。

女性で小柄な大人は、1stポジションを弾くとき、左肘の角度が90度より鈍角になります。男性で大柄な方は、90度より鋭角になります。
小柄な大人と大柄な大人で左肘の角度は、1人の人物の1stポジションと3rdポジションほど違います。適したフォームも変わります。

(3)最も大切なのは本人の感覚

バイオリンのサイズ選びで重視したいのは、本人の感覚です。「この子は何々のサイズが丁度」と先生が判断しても、「1つ小さいサイズでないと持てない!」と子供が主張することがあります。
実例では、中2男子で3/4、小4女子で1/4、ということがありました。逆もあります。小2男子で1/2、小5女子で4/4の子供もいます。

幼い頃から習い始めて小学校高学年になった子は、3/4を飛ばしても支障がないことが多々あります。京都南部は土地柄 中学受験が多く、小学5~6年生でバイオリンのレッスンを一旦お休みする生徒もおり、その間に体が1/2サイズから4/4サイズになったりします。

なかなか単純に、身長が何cmだから何サイズ、何歳だから何サイズ、とは行きません。公開レッスンやコンクールで、ほかの教室の子供たちが どれくらいのサイズのバイオリンを持っているか見ていると、先生により様々だなぁと感じます。

バイオリンはサイズが大きいほど良く鳴るため、少し無理をしても早くサイズアップしたくなります。しかしきちんと指導されていると感じる子供たちが弾いているバイオリンは、意外にサイズが小さい。そして小さくともコンディションの良いものを持っています。

(4)サイズアップのタイミング

一番見ているのは、左ひじの曲がる角度です。また弓の長さが足りなくなってきたときも、サイズアップを提案します。1stポジションの左手が遠くへ行きたがる場合も、替え時です。

今使っているバイオリンが、子供本人の耳や腕とくらべて良いものでない場合、早めのサイズアップを提案することもあります。

弓だけ先に交換し、本体は遅れて交換することもあります。右腕の動きがいい子は、弓の長さが足りなくなってきたと感じたら すぐ弓をサイズアップしてあげたいのですが、バイオリン本体までサイズアップすると左指には負荷が大きいことがあります。
発表会が終わったら辞める予定だったとき、保護者さんと相談して、弓だけ1サイズ上を買ったことがあります。

発表会やコンクールとのタイミングも考えます。発表会のためにサイズアップすることもあれば、発表会が終わったご褒美に新しい楽器を買うこともあります。保護者さんサイドの思惑と相談します。

(5)分数バイオリンの買い方

廉価な分数バイオリン、調整不足の分数バイオリンは、本当に弾きにくいものです。先生はときどき、生徒のバイオリンを取り上げてお手本を示すために弾きますが、よくこれで音出してるね~と感じる楽器もあります。子供の順応力はすごいです。

子供にバイオリンを続けてもらうのに、楽器の良し悪しだけが大事ではありませんが、できるだけ良いものを用意してあげてください。
どうすれば、それなりの値段でそれなりの分数バイオリンを手に入れることができるのか、情報収集して勉強しましょう。

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バイオリン教室には、生徒さんに楽器をどこで買うか指定する先生、全く自由な先生、いろいろあります。京都市内でバイオリン教室をしている友人は「ノータッチ。責任持てないから」と言いました。
生徒のバイオリンを、先生が買ってきてしまう教室もあります。ホテルのラウンジ演奏で一緒になった京都の音大生は「このバイオリン、先生に決められたんですよ~逆らったら恐いんでー」と苦笑いしていました。

私の教室では、相談に乗る/情報提供する/店舗を紹介する/などのお手伝いをしていますが、強制はしていません。どこでどんなバイオリンを手に入れてきても、それに合わせてレッスンします。

バイオリンを買うとき、予約をお勧めしても、予約しないで楽器店へ行かれる生徒さんが結構おられます。「予約することで、買ってくれるだろうと期待されると、断りにくい」という気持ちもよくわかります。
しかし楽器店サイドはそうは考えていません。予約して見にきても、買わないお客さんは一定数いるからです。

予約すれば、条件に合ったバイオリンを見繕っておいてくれます。点検・調整をすませて、その場で持ち帰れるようにしておいてくれることもあります。
バイオリン教室が併設されている楽器店なら、体験レッスンを申し込んで、レッスン時間を使って先生に購入相談をしてもいいかもしれません。いい先生との出会いがあるかも。