ネットでのバイオリン購入はあまりお勧めしません。
一番の理由は、あとから修理や調整をしたくなったとき困るからです。実店舗で正価で買ったばあい、購入後にトラブルや使いづらさがあれば、無償で対応してくれます。割引率の高いネットショップで買った場合、修理代も送料も無償であることはありえないと考えましょう。
バイオリンやビオラは木製で、一種の工芸品です。大量生産の工業製品のように「基本的に問題は起きない」とは考えない方がよいと思います。
中古バイオリンの場合、瑕疵のある可能性は、新作に比べて格段に跳ねあがります。新作であればトラブルがあった場合それは出荷時からのものとみなしてもらえますが、中古の場合は瑕疵が隠れていることも前提のうえでの購入になるので、購入後の修理・調整は原則 買った人の負担になります。
正規の楽器店で買う中古バイオリンの値段が、メルカリなどの中古バイオリンよりかなり高いのは、買ったあとの修理や調整を新品同様にしてくれるからです。
しばらく使ってみないと自分に合っているかわからないパーツに、顎当てがあります。私が紹介した楽器店で買った生徒たちは、数カ月後に連絡しても、無償交換してもらっています。
生徒の持ってきたネットで買った中古バイオリンに、ビオラの弓がついていたことがあります。ごつめの弓だなあと思ったのですが、まさかビオラ弓が付けられてるなんて思いもよらず、調整のため行ってもらった枚方の工房で発覚しました。その数か月後に来た生徒さんのネットで買ったバイオリンには、チェロ弓が付いていました。上には上がいるもんだ。次はコントラバス弓か!?
二つ目の理由は、勉強にならないから・経験を積めないから です。店舗へ足を運べば、直に触れて、音を聴いて、話しを聞いて、選ぶことになります。
分数バイオリンであればサイズアップしていかなければなりません。次のサイズのバイオリンを買うとき、これまで買ってきた経験が生かされます。大人用バイオリンも、続けていればもっといいものが欲しくなります。ボーナスで買うなら何十万円という予算になります。ネットでポチッっと買いますか?
付属品選びは、ネットでいくら情報を集めても「百聞は一見に如かず」です。肩当てが合うか合わないかは、自分のバイオリンに付けて弾いてみなければわかりません。
ネットでの中古バイオリン購入はリスクが高いです。リスクという単語は「ブレ幅が大きい」「予測がつかない」という意味で使われます。出費に見合わないバイオリンを買ってしまうケースもあれば、安価で良いバイオリンが手に入るケースもあります。
アタリハズレの確率はどれくらいなのでしょう?
過去5年間に生徒さんが買ったバイオリン・ビオラのアタリハズレ度を、4段階で評価し、購入ルート別に列挙してみました。(様々な楽器を扱う楽器店でも、バイオリン専門のスタッフさんがおられる店舗は、バイオリン専門店に含めました。)
◎アタリ
〇値段相応
△ややハズレ
✕ハズレ
バイオリン専門店・バイオリン工房 で購入
◎4/4新作
◎4/4Va ネットでハズレVnを買った反省を踏まえ、工房で買った
◎60万オールド 先生が付き添って、自分で選んだ
◎1/2新作 選定と調整は職人さんにお任せ
〇4/4新作
〇4/4新作
〇1/4新作
△4/4新作 弓のネジが回らない 販売店からメーカーへ送り返して無償交換
様々な楽器をあつかう楽器店 で購入
◎4/4中古 アタリハズレの激しい店舗だったが、珍しくアタリがあった 先生立ち合い
〇4/4新作
〇4/4新作
〇4/4新作
〇4/4新作
〇4/4新作
〇1/4中古
〇1/10新作
△4/4新作 買って数週間後、指板がはがれる。販売店にて無償修理
△3/4新作 買って1年過ぎてから、指板がはがれる。販売店にて無償修理
△1/2中古
△1/2中古 音質が悪く、後日工房で調整(有償)
△1/4中古 実店舗で何点か見比べて買ったが、音質が悪く演奏にも支障が出てきたので、後日工房で調整(有償)
△1/8新作 ペグが止まらず実用に即さない 音質が悪い 工房で調整(有償)
ネットの楽器店 で購入
△4/4新作 HPには「職人が駒を調整」との記述があったが、子供の工作のような造作だった。
△1/4新作 4万で購入したそうだが、音質が悪く、発音しにくい。
メルカリやネットオークション で購入
◎4/4中古 バイオリン経験者の小学校の先生が、クラスの生徒に弾かせる楽器として購入
◎1/4中古 どれくらい続くか分からない1台目であったため、投資できないとの理由にて
○1/4中古
○4/4中古 3万円かけて修理
△4/4中古 弓はビオラのものが付いていたため買い直し
✕4/4中古 3万円かけて修理
✕4/4中古 4万円かけて修理 弓はチェロのものが付いていたため買い直し
✕4/4中古 指板の反りが激しく修理代がかかると言われ、新作を買い直し
サンプル数が少ないのですが、実店舗で買ったバイオリンは品質が安定していて、メルカリ等で買ったものはバラツキが大きいことがお分かりになりますでしょうか。明らかに「ハズレ」と言えるケースは、メルカリ等しかありません。
ただメルカリ等で生徒さんが買った楽器は、ほとんど値段を尋ねていません。数千円で買っていたとしたら、数万円の修理代で手に入ったお買い得品、とも言えます。
実店舗の難点は、その所在が都会に集中していることです。また店舗により事情もさまざまです。
バイオリン専門店は、8万円クラスのいわゆる初心者セットを置いていないことがあります。(15万円、30万円より安い楽器は置かない、という専門店もあります。) しかし買い手側からすると、どれだけ続くかわからない習い事の初期投資には8万円ですら高すぎる、と感じられるご家庭も少なくないでしょう。
では様々な楽器をあつかう楽器店なら置いてあるのかといえば、「様々な楽器をあつかう」という理由により切らしていることもありますし、当然分数バイオリンは全サイズ置いてません。
大阪茨木市の楽器店アマービレは、中古バイオリン・ビオラに力を入れており、セットで4~5万円のものが常時複数台あります。大阪梅田のクロサワバイオリンも、タイミングによっては同価格帯の中古バイオリンがあります。
ネットの楽器店で買う場合、私がお伝えしている留意点は2つあります。
①実店舗もあるネットショップにする
②長年続いている店舗にする
いつから楽器販売業をしているかは、偽ることもできます。掲載内容の丁寧さや、過去から積み重ねられた情報量などを見て、判断しましょう。