左の手首

初めてバイオリン・ビオラを構えたとき、左側で一番最初に覚えてもらいたいのが、左手首の角度です。

手首はまっすぐ。
へこんでも、出っ張っても、いけません。
肘からてのひらの真ん中まで、1本芯が通るようにしてください。

左手首は楽器に隠れていて、ダイレクトに自分の眼で見ることができません。鏡に映すなどして確認しましょう。

手首の型は、指の使い方と切り離せない関係にあります。
手首の型が良くなれば、指の使い方も良くなります。
その逆もあります。
手首の角度がなかなか良くならない場合、指の使い方とセットで学ぶと、改善しやすいです。

また、肩や胸の状態とも密接なかかわりがあります。肩や胸のコンディション(ポジショニング)が悪いと、手首をまっすぐには しにくいです。

左手首がへこんでしまう場合、楽器とのくっつくところに何か物体を入れます。
親指の第二関節の裏に、レッスンでは先生が指や鉛筆を入れます。家では消しゴムやコルク、ポストイットなどを挟むといいでしょう。

子供のばあい、出っ張ることはあまりなく、大抵へこみます。家で保護者さんが、先生の代わりをすることが大切です。私が子供のころは、小鳥さんを入れる、とか、卵をこわさない、とか言われました。

大人の生徒さんは、へこむより出っ張ることが多いようです。レッスンでは先生がやんわりと手首や左肩を押します。家では鏡を使うといいでしょう。胸郭や体幹から直していくこともあります。

右の手首

右側で一番最初に覚えてもらいたいのが、手の甲の傾きです。
弓を持たされて無意識に握ると、手の甲が外側へ向きます。この形だと、弓を端から端まで真っすぐ動かすことができません。
手の甲を内側(自分側)へ向けると、弓の端から端までストレートに弾くことができます。

私は子供のとき、手の甲に、水を入れたコップが乗るように、と言われました。実際にはそんな角度にはなりませんが、とっかかりのイメージにはなります。
私の右手の動きをジッと見ていた生徒さんが、「手の甲の上になにか置けそう」と言いました。観察力のある方です。

弓の動かすときの手首の角度については、最初は「手首を山にする、谷にする」と教えます。少し掴めてきたら、左右の動きだと教え直します。最終的には「左手首は受動的な関節」ということを覚えてもらいます。

小さな子のばあい、弓をたくさん使わせると、往々にして勝手に直ります。弓を両端まで使わないと手首を強制的に動かせないので、端まで行ってくれない子には弓に目印のシールを貼ります。弾いているうちに、手の甲の向きが内側にひっくり返ります。

小さな子は弾かせていれば、弓と弦の角度も90度になり、軌道も直線になります。ほんと羨ましいです。

小さいころ何も考えなくても、90度まっすぐの軌道になっていたハズが、歳を取ると体幹が衰え、まっすぐで なくなってきます。そうなると、理屈(頭)で原因と対処法を考えなければなりません。

まっすぐ弓を引けない大人の初心者さんは、自分を中心にした弧を描きます。まっすぐ引けていた人が体幹が衰えてきたときは、逆のカーブになります。私も例外ではありません。

フィギュアスケートの高橋大輔が、「昔は何も考えずにジャンプを飛んでいたが、今は頭で考えて飛んでいる」とインタビューで言っていました。私と一緒にしたら各方面からオコラレそうですが、深くうなずいてしまいました。