バイオリンの調弦をペグでするのが難しい生徒には、「アジャスター内蔵テールピース」を必ず付けてもらいます。「アジャスター内蔵テールピース」とは、テールピースにアジャスター組み込まれた、プラスチックの一体成型となっているフィッティングパーツです。

♫肩当てなどの、バイオリン(や弓)にくっついていない道具は「付属品」と呼びますが、顎当てなどくっついている道具はフィッティング or フィッティングパーツと呼びます。

最近の分数バイオリンには「アジャスター付きテールピース」がほぼ付いています。しかし昔は付いてなかったので、中古の分数バイオリンには付いていないことがあります。また初心者向けセットでも、大人向けのフルサイズは付いていないことがあります。

「アジャスター付きテールピース」への交換は、基本的にバイオリン工房でやってもらう作業ですが、自分で行うこともできます。

♪弦の交換に慣れている。
 2020.09.08 バイオリン・ビオラ 弦の交換方法  の内容は十分わかっている。

♪駒の傾きや位置がずれたとき直せる。
 2020.10.11 バイオリン・ビオラ 駒の調整

♪顎当ての取り外し、取り付けができる。
 2020.10.26 バイオリン・ビオラの顎当て 交換と高さ調節

以上の作業ができる場合のみ、自己責任で行ってください。交換後は、毛替えのときなどにバイオリン工房で点検してもらいましょう。
テールピースを交換すると、駒からテールピースまでの弦の長さが変化します。弦の長さや、テールピースが変わったことで、音色や音量が変化する場合があります。
想像以上に難しいので、手仕事に自信のない方は止めておきましょう。
掲載している写真は、1/4サイズの分数バイオリンです。

♫ 交換するテールピースをはずす

作業に入る前に、写真を取っておくといいと思います。テールピースや顎当ての位置を決めるとき、元の写真があると安心です。

①顎当てを外す
顎当ての脚が2本ともテールピースの左側にある場合は、外さなくてもテールピースは交換できますが、外した方が作業はしやすいでしょう。

②ペグをゆるめて、弦をテールピースから外す
駒が倒れます。

③テールガットをエンドピンから外す
テールガットを外すと、エンドピンがゆるんで動くようになります。エンドピンがどこかへ転がっていったり、元の位置へ収まらなかったりしないよう、十分に注意してください。

♫ アジャスター内蔵テールピースをつける

①アジャスター付テールピース の テールガットを張る
箱の裏面の図も参考に。

②テールガットをエンドピンにはめ、テールピースを楽器の表板にそわせて、テールガットの長さを決める

テールガットは硬いので、指で何度も押して折りクセをつけながらやりましょう。油断するとエンドピンが飛んで行ったり、顎当て(を付けたままだと)に強く当たったりします。周辺のパーツを傷めないよう、気を付けてください。

テールガットは時間がたつと伸びてきて、テールピースが駒のほうへずれます。たわみが真っすぐになった状態を想定して、長さを決めてください。長さが決まったら、テールピース裏面の左右のバランスを整えます。

③テールピースに、ADGEの順で弦を張る
爪楊枝やピンセットなどがあると便利でしょう。
アジャスター付テールピースのE線は、ボールエンドに対応した形状です。ループエンドでも張れますが、テールピースへの負荷を鑑み、早めにボールエンドへ交換しましょう。

④ナット(上駒)の溝に4弦がはまっているか確認し、弦の下に寝かせた駒を入れ、駒の溝に弦をはめながら立てる

⑤テールピースと顎当てが触れていないか確認する
触れている場合は、顎当ての位置を調整したり、顎当てを削ります。オーバーテールピース型の顎当てのばあい、顎当ての底面がテールピースと接触してしないか確認してください。黒檀は相当硬いので、削る必要があればバイオリン工房でしてもらいましょう。