バイオリン・ビオラを習うとき、第1ポジションの次に習うのが第3ポジション、その次に習うのが第5ポジションなのは、なぜでしょう?
1本の弦で、0を使わずにドレミファソラシド(8つの音)を弾くとしたら、3パターンの上がり方が考えられます。

①1234 1234
②123 123 12
③12 12 1234

脳みそ的には①のように上がると分かりやすいのですが、肉体的にしんどいです。まず1212と上がる動きを学びます。それから121212と上がると、第1→第3→第5ポジションと行けます。

私のバイオリン教室では、五線譜の線上に乗っている音符を「串だんご」、線と線のあいだにある音符を「どら焼き」と読んでいます。
第1・第3・第5ポジション(奇数ポジション)だと「串だんご」が常に奇数指番号、「どら焼き」が常に偶数指番号で、脳みそが理解しやすいです。
2020.09.15 場所読み:「串だんご」と「どら焼き」の法則

その次は、明確に〇〇ポジションを修得しましょう!という感じではなく、曲をこなす中で様々なポジション移動を体験していきます。

カシコイ子供だと、自動的に偶数ポジションも体得するのでしょうが、私はそうではありませんでした。ひたすら奇数ポジションで高い音の出てくる曲をどんどん弾いていきました。そうなってしまう子供は結構多いです。
今にして思えば、偶数ポジションを戦略的に使えないことで、しなくていい苦労をしていました。

奇数ポジションが体にしっかり入ったら、第2ポジションと第4ポジションを練習しましょう。第2と第4は同時並行的に勉強すると効率がいいです。奇数ポジションの「串だんご奇数・どら焼き偶数」を反転させれば、偶数ポジション脳になります。

偶数ポジションの大切さに気付いたのは、シューマンの交響曲 第2番 第2楽章が弾けなかったから。人間、追い込まれないと分からないものです。その後は偶数ポジションを使うと楽な箇所を積極的に見つけ、片っ端から弾いていきました。

3~4つくらいの音符のかたまりでも、偶数が楽なところは偶数にして、第1ポジションと第2ポジションの移動、第2ポジションと第3ポジションの移動というように、二度の動きを多用する弾き方をしました。二度のポジション移動と三度のポジション移動の技術は、別物です。
二度に慣れてきたら、第1ポジションと第4ポジション、第2ポジションと第5ポジションといった組み合わせで、四度の訓練もやりました。そのうち事前に決めなくても、楽譜に書きこまなくても、読みながら弾けるようになりました。

奇数ポジションのほうが楽な部分が途中にあっても、一貫して偶数ポジションのみで弾く、という練習もしました。奇数ポジション中心で弾いていた子供のころの、逆をやったワケです。


偶数ポジションは、左のフォームを整えるのにも向いています。

第2ポジションを使うようになってから、第2ポジションのほうが第1ポジションより肉体的に楽なことに気づきました。バイオリンは、ヨーロッパの白人男性がサイズを固定化した楽器ですから、彼らに合うサイズとなったと私は考えています。

第2ポジションだと、左肘の角度が少し狭くなります。その方が、人差し指をそらすのも、小指を伸ばすのも、楽です。オクターブの距離も、第1より第2が短くなります。「左のフォーム」「左指の押さえ方」の改善に取り組むなら、身体的には第2ポジションが一番いいでしょう。


第4ポジションは、左手が楽器のボディに当たって真っ直ぐ上がれなくなって以降、どのような形で上がっていったら良いかの礎となるポジションです。

第3ポジションで左手が楽器ボディに当たる、との説明もありますが、正確には、『音程の高い弦 ✕ 指番号 数字の低い指』という条件でボディに当たることはありません。また白人男性の手の厚みと、日本人女性の手の厚みはだいぶ違います。

第4ポジションになると、左手に楽器が必ず当たります。『音程の低い弦 ✕ 数字の高い指』になると、バイオリンのボディが邪魔になります。第4より上へ行くために、肩関節から左てのひら・左腕をどう御すべきか、という学びが必要です。肩関節が硬いと、ハイポジションは出来ません。

肩関節が柔軟になるとハイポジションも取りやすく、10度など、およびもつかなかった距離が楽に押さえられるようになります。ビブラートがかけやすくなり、トリルが回ります。