奈良オプティークというメガネ屋さんで、楽譜用のレンズを作り直してきました。

「楽譜を読む」と一口にいっても、色々なシチュエイションがあります。紙面が真っ黒な難しい独奏曲に取り組むときも、読み間違えないよう神経を使いますが、最も過酷なのはオーケストラ、特にオペラやバレエです。

オーケストラでは、楽譜を読みながら、指揮者・コンマスを見ながら、弾かなければなりません。2人で1本の譜面台なので、眼と楽譜の距離を自分好みにできません。楽譜の角度も斜めです。

もりだくさんの視覚情報処理をしながらバイオリンを弾かねばならないため、オケで弾くときの楽譜の距離(だいたい1m)に合わせた、細かい文字を読むことに特化したレンズを作ってもらっています。

オケで、楽譜を読みながら指揮者を見る方法はコチラ!
 2022.06.21 眼とバイオリン

初めての楽譜専用メガネは、2011年頃に作りました。京都でアレクサンダーテクニークを指導する深海みどり先生の紹介により、大阪江坂の「視覚情報センター」へ足を運びました。

視覚情報センターの田村知則先生は、イチローを始めとした超一流のスポーツ選手の眼のアドバイス、メガネ作りをしてこられた方。ここで作ってもらったものほど、楽譜が読みやすいメガネには出会ったことがありません。脳みそ最小の処理能力で読めます。田村先生とお話ししていると、その洞察力には舌を巻くばかりです。

そのときは読書用(近距離)と楽譜用(中距離)の2つを作りました。メガネを使っているうちに眼球まわりの筋肉がゆるみ、どんどん視力が上がり、半年ほどで読書用メガネが、外出用(遠距離)メガネになってしまいました。なんということでしょう!

再度 大阪江坂を訪ね、新たな読書用(近距離)と楽譜用(中距離)を作り、3つのメガネを使い分けてきました。

しかしここ数年 加齢によるものか、ふたたび視力が落ちてきて、楽譜用が見づらくなってきました。大阪江坂の予約は早くて一ヶ月待ち! 待てずに、奈良にあるお弟子さんのメガネ店へ行きました。

JR奈良駅から北へ10分弱。カフェ?美容院?を思わせる、緑いっぱいの可愛らしいエントランス。店内も木質のものが多くて落ち着きます。初診なので状況・要望をイチから説明し、すべての検眼・測定で2時間かかりました。

大阪江坂の田村知則先生は、この田村流メガネは、日常生活でもずっとかけっぱなしにしているように、と言います。実はそこが腑に落ちていません。体が気持ち悪いのです。緻密な文字は読みやすいのに、周辺視野がぐらぐらしているように感じます。

「悪い眼(様々な歪みがある眼)で、緻密な情報を読みたいとき、レンズをどう作るか」のアプローチは大変素晴らしいです。

しかし「悪くしてしまった眼に、どう接してあげたらいいか」については、アレクサンダーテクニークから派生した アイボディ の考え方のほうが腑に落ちるのです。


田村知則先生の考え方、田村流メガネがどういうものかお知りになりたい場合は、著書をお読みください。何冊か出版されています。奈良オプティーク の記事も読みやすくお勧めです。

また実際にメガネ店に行って作ってみたい方は、「視覚情報センター」のHPに認定店が載っています。奈良県下だと「奈良オプティーク」のほか、御所市にも認定店があるようです。

楽譜用メガネは、PCにも使っています。細かな情報が読み取りやすいです。人間がこんな作業を毎日何時間もするようになったのは、つい最近。眼球にとっても身体にとっても、負担は大きいのです。

日常生活でははずしています。木材をノコギリで切るのは、田村流メガネをかけていたら真っ直ぐ切れないことがわかりました。メガネをはずしたら真っ直ぐに切れました。
バイオリンの練習もレッスンも、かけずにできる時は かけていません。

  アイボディ の理念にのっとった、眼の使い方を取り戻す訓練用のメガネがあります。これを使ったあとは身体がすがすがしいです。似たような商品がネットで散見されます。 ピンホールグラス(ピンホールメガネ)

田村流メガネからピンホールグラスに変えた瞬間、後頭部から首・背中・両脇にかけての筋肉がゆるむのが分かります。それでPCのキーボードをたたいてみると、腕や指も軽やかに動きます。アイボディ流の方が身体のパフォーマンスは上がるでしょう。

しかしながら文字や音符をクリアに読むことはできないし、視界が暗くなるので使えるシチュエーションは限られます。私はテレビを見るときに使っています。

2019年秋の京田辺市役所のロビーコンサートでは、半分以上の曲をメガネなしの暗譜で演奏しました。私にとっての「試行」「挑戦」でした。今後も独奏の機会があれば、できるだけメガネなしにしたいと思います。

アイ・ボディに興味のあるかたは、本をどうぞ。

「アイ・ボディ 脳と体にはたらく目の使い方」
ピーター・グルンワルド 著  片桐ユズル 訳
誠信書房 2020年 ISBN 9784414414769

絶版となっていましたが、2回目の改訂版が出版されました。
我が家にも、京田辺市の図書館にもあります。