トリルや装飾音符の左指が回らないのは、胸の問題です。
人間の体は、体幹などのコアな部分、コアに近い部分を改善できれば、指などの末端は勝手によくなります。勝手によくならなくても、改善しやすくなります。

30代半ばごろトリルが回らなくなってきました。体の使い方に問題があるのだろう、と思いました。教えてくれる人や情報を求めて東奔西走。少しづつ自分の身体感覚(固有受容覚)を取りもどし、指回りは戻ってきました。

以下のトレーニングは、左だけでしてもいいですが、左右を同時にすると なおいいです。

①脇の下に「マチ」を作る

脇の下に「マチ」があるように感じてください。上腕と胸郭が、すっきりセパレートしているように意識します。
洋裁をイメージしてください。画に書いてみるとイメージがはっきりします。(レッスンでは画を書いてあげます。)

②マチ部分の前の「ヒレ」をゆるめる
③マチ部分の後ろの「ヒレ」をゆるめる

「マチ」部分の、前のヒレ部分と後ろのヒレ部分が、ゆるんでタポタポするようにイメージします。背中側は分厚いカーテンのドレープのように。実際に反対側の手でふれて、イメージを強化します。
②③は、同時にやると集中力が分散するので、別々にやります。 

④肩甲骨と胸椎のあいだを広くする

広くする。セパレートする。その部分の肉を無くしてしまって、肩甲骨が浮いているようにイメージする。 

⑤胴体にはめている腕の付け根の位置を、後方へ付けなおす

現代人は、やや前方にはまっています。それにより肩関節の動作がぎこちなくなっています。バイオリン・ビオラを構えると、さらに前方になりやすいです。
後方へはめなおすと、肩甲骨と胸椎のあいだが動いて、肩甲骨が後ろへ出っぱります。

⑥胸より上腕が下の位置になるように感じる

うまくイメージできると、肩甲骨と胸椎のあいだが広がり、腕の付け根の位置が後方へ移動します。
④⑤⑥は、同時に起こり、上腕の位置は数cm動くこともあります。

⑦顔の向きを変える

左を向いていると、左胸をがっちり押さえこんでいることがあります。

⑧下部肋骨の存在を感じる

そこに在るなあ、と感じるだけで、体は変わります。
側面が一番感じやすいです。側面・前面・背面と分けて試してみましょう。

⑨臀部を手放す

腹部のインナーマッスルに働きかけて、臀部を外側へ切り離してしまうようイメージします。
膝に過剰回内があったり、足裏アーチが無かったりすると、手放しにくいです。

⑩左親指のポジショニング

・左親指とネックの接点が手前すぎないこと
・左親指の腹が内側(ネック側)を向きすぎないこと
・指板から上方に出すぎないこと(腕が長く手が大きい方は、これに該当しないこともある)

助けをかりることができるなら、左親指の付け根「合谷」というツボの てのひら側をグイッと押してもらい、その部分に入っている筋力を強制的に解除すると、4本の指がぱらぱらと動きやすくなります。