個人レッスンでバイオリンを習うと、立って弾きます。
しかし学校のクラブ活動で始めると、座って弾きます。

プロの人たちを見ると、オーケストラ奏者は座っています。
ソロコンサートをひらく人や、バイオリン協奏曲のソリストは、立っています。

どちらがいいのでしょう?
一番いいのは、どちらでも弾けることです。


立って弾くのが上手だと、座っても上手に弾けます。
座って上手に弾けても、立って上手に弾けないことがあります。

立ったときは、頭のてっぺんから足の裏までが全身になります。
座ったときは、頭のてっぺんから座骨までが全身になります。

立って弾いてた人が座って弾くのは、体の一部パーツが引き算された状態になるだけです。もちろん新たな体の使い方のコツはおぼえなければなりませんが。
オーケストラ奏者が座って弾いているのは、長丁場だからです。プロは皆、個人レッスンで立って弾くトレーニングを積んできた人々です。

バイオリンは趣味ならば、部活動や市民オケで弾きたいと思っているだけならば、座って弾くことができれば十分と思います。
私のレッスンでも、立って弾けるようになることは目指さない生徒さんがおられます。座るときは、浅めに腰かけて、骨盤を立てましょう。

現代人は体のあちこちが動きにくくなっています。下半身も、脚が歪んでいたり、足裏がへばっていたりします。
座ると、座骨が「足裏」がわりとなります。ゆえに立っている時とは、違った体幹を構築できます。実際、座った方がうまく弾けたり、楽に弾ける生徒さんがおられます。座って弾くことで新たなコツをつかんで、立って弾くことに活かせる生徒さんもおられます。


わたしのレッスンでは、立って弾くことを目指す生徒さんでも、座って弾く練習を取り入れます。立ち姿が上手なら座っても上手に弾けるのですが、座って弾くことによる気づきを立ち姿にフィードバックすることもできるからです。

よく行うのは、座ったり立ったりしながら弾く練習です。椅子に座ったり立ったりするトレーニングは、アレクサンダーテクニークの基本です。しゃがんだり立ったりもします。いずれの動作も、弾くのが難しければ、バイオリンを構えただけ、もしくはバイオリンを持っただけの姿勢で行います。
跪座(きざ)の姿勢でも弾きます。跪座とはしゃがんで、膝を床について、かかとにお尻を乗せた姿勢です。

ちなみにインドでは、あぐらのように座り込んで、クラシックとは違った保持のしかたで、バイオリンを弾きます。子供たちがその姿勢でずらりと並んでいる写真を、初めて見たときは、仰天しました。


バイオリンをわきへ置いて、体作りのトレーニングもやります。綱引きをしたり、竹刀を振ったり、腰割りの姿勢で歩いたり。腰割りとは、お相撲さんが四股(しこ)を踏むときの姿勢です。上腕の回内・回外。腹筋や背筋をきたえる姿勢のとり方。お茶碗やコップの持ち方。

「筋トレをすればいいのですか?」「柔軟体操すればいいんですか?」などと良く聞かれますが、少し違います。