ロングトーンを制する者は、全ての弓使いを制します。
飛ばし系も例外ではありません。

スピッカートが上手になりたい場合、スピッカートそのものを練習してもあまり上手になりません。
ロングトーンで体の使い方を再構築すると、あらゆる弓使いが本質的に上手になります。

ロングトーンの練習方法

まずはメトロノーム60で4拍。
全弓で、一定の速度で弾きます。
常に同じ音量・音質を心がけます。
全ての通過点において、無理・無駄のない骨格・筋肉の使い方を心がけます。

弓を4分割して印を貼ると、速度が一定かチェックできます。
印は、見つめるとフォームが崩れるので、ちら見したり、周辺視野で見ます。または鏡に映して見ます。
真ん中の2ブロックで走りやすく、両端の2ブロックは折り返すため速度が落ちやすいです。

弓先はティップに乗り上げてしまう際まで、乗り上げる直前を、弓元はフロッグの金具に当たる際まで使い、シビアな全弓を体に覚えさせます。

鏡でフォームを確認しながらやるといいです。ビデオで撮りながらやると、なおいいです。

周辺視野とは?
2022.06.21 眼とバイオリン

メトロノーム60で6拍、8拍、と伸ばして行きます。
深山尚久先生は、十数拍の練習をやらされて、大層つまらなかったと述べておられます。

スケールでロングトーンの練習

メトロノーム60 4拍で全弓を使う
①1音を4拍
②1音を2拍で、1弓で2音スラー
③1音を1拍で、1弓で4音スラー

弦の選択

真ん中の2弦から取り組むのがいいと思います。
両端の弦は難しいので、A線ができてからE線、D線ができてからG線に取り組むのがいいです。

左指1234も、両端が難しいので、23から取り組むとよい、と考えています。
2019.07.09 左指の1234は、どういう順で学ぶべきか

バイオリンの初心者向け教本は、音程が高い2弦からスタートします。

●子供の聴きとりやすい音域である。
(年齢とともに聴きとりやすい音域は下がる。)
●分数バイオリンは、低い弦の音が出にくい。
●左指1と2の置く位置が、4弦すべて同じになる。
●A線の01234で、イ長調のドレミファソとなり、A線とE線の0だけで簡単な曲が弾ける。

といった理由があげられます。

しかしイ長調で曲を進めていくと、E線の使用頻度が増えていきます。
それにやりにくさを感じない生徒は、教本の通り進めますが、E線にストレスを感じる生徒はニ長調を取り入れていきます。ニ長調は、A線とD線を使うからです。

あまりに頑張りすぎて、バイオリンを弾くのが嫌いになっちゃうと本末転倒です。どう自分のご機嫌をとったら練習が続けられるのか、考えましょう。自分を一番良く知っているのは、自分です。

私の場合、今日は調子が悪い・・と思ったら、スパッと止めます。そんな日が何日も続いて、焦ることもあります。今日は調子がいい、と思ったら、予定より多く練習します。

バイオリンを習い始めて1年間、解放弦のロングトーンしかしていない、という大人の生徒さんにお会いしたことがあります。生徒も先生もすご忍耐力です。

しかしそれでモチベーションが保てる方は少数派だと思います。易しい曲・好きな曲を並行してやることで、地道な基礎練習も頑張ろう! という気持ちが維持できるのだと思います。

悪いフォームで弾くということは、悪いフォームを身に付けるために練習していることになります。先生としては、悪いフォームでどんどん曲を弾いて欲しくはないのです。

でもフォームの改善を最優先にすると、楽しくなくなってしまいます。生徒さんの希望曲が、その技量に合わなくても、やりたい曲を却下しないようにしています。

基礎練習を頑張れる生徒さんには、基礎練習をしてもらいます。課題の量は、様子をみて塩梅します。
基礎練習アレルギーの生徒さんは、曲を弾いてもらいつつ、基礎練習をわからんように取り入れる、という進め方をします。

先生にとって、曲だけのレッスンって楽なんです。生徒の演奏フォームを改善しようと思うと、先生に洞察力や忍耐力がいります。
生徒さんに1年間、解放弦のロングトーンを練習させていた先生は、粘り強い方なんだろうなと思います。