わたしが助けたコヤギは今、リサさん夫婦のところで幸せに暮らしている。お母さんは毎日体調をみて美味しいごはんを用意してくれる。お父さんは居心地のいい小屋を作ってくれた上に日々改良を重ねている。
息子のコンちゃんとは体形が同じだ。コンちゃんは縦長、コヤギは横長。コンちゃんは弟分ができたと年長者風をふかしているが、コヤギのほうは、このちんまい奴はなんだ?という体である。
ずっとネグレクトされていたのに、コヤギには自己否定感や、自己憐憫の情は見られない。山にいたときの彼にあったのは、ただ「あきらめ」だった。それは会いにいくたびに胸を締めつけられる情景だった。けれどもう山にヤギはいない。そのうち思い出さなくなるだろう。私たちには「忘れる」という機能がそなわっている。

お父さんが作ってくれた豪邸
2025/12/09(火) 17:00
6/29に右足かかとを骨折したリハビリで、筋トレ・ストレッチ・朝夕ウォーキングの日々をすごしていた。この日も川沿いを歩いていると、竹林からヤギの大きな鳴き声が聴こえた。山に分けいって農道をのぼってゆくと、竹にリードをつながれたコヤギがいた。家に引きかえして、ありあわせの野菜と、水と容器をかかえて竹林に戻ると、コヤギはすごい勢いで食べた。
そこにいる理由がわからなかったので、とりあえずそのままにして帰宅。捨てられたのなら連れて帰ってもいいのでは? でも何故あんなところにいるのか分からない。捨てられた以外に理由があるだろうか? 夜は冷え込む。猪・鹿・猿がひんぱんに目撃される場所で、危害を加えられる可能性もある。何十mか奥には大型獣を捕獲するオリが設置されている。
大家さんや町内の友人に相談。大家さんは関わらないほうがいいと言う。どんな事情があるのかわからないが、捨てられたと見なされれば保健所(動物愛護センター)へいき殺処分だろうか。
近くに田畑をかりているカヨちゃんが、そこにつないで飼ってもいいと言ってくれた。柵で囲ってある5畝ほどの広さ、クズ野菜もあるし、小屋を作ってあげたらどう?と言う。
きっと親身になってくれるだろうと考えたリサ夫妻に、夜連絡がとれた。見にいきたいというので20時過ぎに一緒に現地へ向かう。リサさんが連れて帰る!と言い、私の左頭は逡巡したが、3人で車に乗せた。思えばあのとき私たちはコヤギにひとめぼれしたのだ。

12/10(水) 7:00
「コヤギは安全な場所に移しました。0774-XX-XXXX」と書いたダンボールを置いてくる。リサ夫妻は若いので、私が守ってあげなければ、と思う。いったいどういう状況下でコヤギはあそこに繋がれたのだろう? 要らなくなったから捨てた、という以外に理由が思いつかない。首輪にも何も書いていない。
地元のMジジ宅の、お隣のヤギかもしれない。(のちにそうと判明) この夏から秋にかけてMさん近隣では、コヤギの大音量の鳴き声に悩まされていた。草を食べさせるために飼ったのだと思うが、冬になり用無しになったのか? Mジジによると12/9午後からコヤギの姿を見ていないと言う。
野菜を持ってリサ宅へいくと、コヤギは幸せそうにくつろいでいた。あんなに大音量で鳴いていたのに全く鳴かない。ワラが積んであり、知人がカヨちゃん田畑からもらってきたという。急遽オンライン勤務を申請した旦那さんが庭の一角で小屋を作っていた。昨夜こつぜんと現れたコヤギなのに、もうリサさんは自分たちが飼ってもいいと思っている。コンちゃんが春から通う奈良の学校でも、ヤギが飼いたいらしい。
12/11(木)
コヤギの今後のために正式な手続きを踏んだほうがよいと考え、警察に届けることをリサ夫妻に提案。10時一緒に井手町の交番へゆくと、管轄が京田辺市の田辺警察所なので、そちらへヤギを連れて行ってほしいと言われる。マイクロチップが入っているかリーダーで調べられたが、入っていなかった。ヤギは飼うとき自治体への届けがいるらしい。そのため田辺警察所から井手町役場へ問合せがいき、飼い主が判明した。
飼い主の説明
・竹林には時々ヤギをつれていく。あそこで飼っているのであって、放置しているのではない
・9日から遠方へ出かけていて、周辺の草を食べといてもらえればと思い、あそこへつないだ
大家さんが10日に飼い主に会って挨拶したと証言
・2日間ほっといて仮にヤギがいなくなっても、仕方ないと思っていた
・今日20時なら引き取りにいける
・自分がお金を出して買ったヤギだから、どう飼おうと自由
・私有地に入って人のものを盗むな
19時 一緒に警察へ行くためにリサ宅へ。
京田辺市へ向かう車のなかで「飼い主が現れたらコヤギを引き取れないか話してみたいが、どう思う?」とリサが言う。なんと勇気のある若者だろう。「挑戦してみてどうなるか分からないことは、挑戦しよう。しないで済ませると悔いが残り、自分の財産(経験)にならない」というのが私の考えだと伝える。
しかし飼い主は午後のうちに警察に現れ手続きをすませていた。「落ち度のない自分がヤギを引き取りに出向くのはおかしい。また20時は忙しい。ヤギは届けてくれ」と言ったそうで、警察には現れなかった。現場を見ていない、コヤギしか見ていない警察は、「外傷があるなど、虐待を受けている様子が見られない」と言った。リサ宅で2日間たっぷり食事をしたこともあって、コヤギはふくふくしていた。
リサ夫妻とわかれたあと晩酌中のMジジ宅におしかけ、一緒に庭からコヤギが戻ってくる様子をうかがう。

12/10~11のコヤギ
12/12(金) B地点
6:30コヤギは竹林に戻されていた。まさか速攻で戻されるとは思わなかった。
明日の非電化工房ロケットストーブ制作WSに参加するため、昼過ぎに栃木県那須市へむけて出発。電車の中から力になってくれそうな友人たちに次々とメッセージを打つ。頭のなかがコヤギでいっぱいで電車をたくさん乗り間違える。日がとっぷりと暮れてからJR黒磯駅に到着。よたよたと予約していた宿をさがす。この精神状態でよくたどり着けた。
宿に着いてもメッセージの応酬は続く。スクリーンタイム7分(スマホの平均使用時間)の眼には苦行だ。
遠方にあって今できること、このとき一番こきつかったのはエリさんだ。エリさんは霊魂や神様がわかる。彼らは人間とは異なる存在で、なにがしかをピタリと言い当てる※こともあれば、ツボをはずすこともある。適当に取り入れ、適当にスルーするのが、賢い付きあい方だ。
(※例えば1つ前に住んでいた貸家は、4-5年で出ることになると言われていた(信じていなかった)が、入居日が2020年2月1日、退去期限日が2023年1月31日だった。)(ツボをはずす事例はいっぱいあるので、割愛する。)
・1人で抱えない、誰かに話す
・警察より町役場、争いごとにしない
・拉致しない
・近くの神社に、お金を封筒にいれてお供えする
12/13(土)
JR黒磯駅に迎えにきてくれた非電化工房のダイチくんに、全員集合を待つあいだコヤギの話を聞いてもらう。20代だというのに自然とともに暮らしたいという方向性をはっきりと持っている青年だ。
犬の散歩中にヤギの鳴き声を聴いたと大家さんからメッセージが届く。大家さんによると、飼い主は「思いつきで何かをする」人だそうだ。過去にドーベルマン(?)を飼いだしたが、どんなつなぎ方をしていたのか、大家さんの庭に入ってきたこともあったという。犬はいつの間にかいなくなったらしい。
24時過ぎJR玉水駅に帰着。その足で竹林へ向かう。猪らしき鳴き声がヤブから聴こえたので、コヤギの声だけ確認してUターン。夜は連れて帰っているのでは?という声もあり、幾度か夜間に確認にいくが、コヤギはいつもいた。

お腹にシワが寄っている。草を反芻するヤギは食事がとれていればお腹がふくらむ。
12/14(日) 小雨
玉津岡神社へおまいりし封筒に入れたお賽銭を投じる。おみくじを引くと、コヤギと関係ありそうな項目はすべて「うまくいく」とあり、良縁や投資など関係なさそうな項目はイマイチだった。信じることにする。
コヤギはB地点の草を根っこまで食べつくしている。口が届く範囲には泥土しかない。リードの長さ115㎝。このままでは飢え死にする。野菜を差し入れ。コヤギが衰弱しないよう餌を食べさせたほうがいいのか、衰弱しなければ保護を訴えることができないのか、意見がわかれる。
柴犬Tちゃんを散歩させている人によると「竹林からの鳴き声は以前にもあった」「あそこで飼ってると聞いた」「早朝に猪と遭遇したことがある」。実際に川沿いには猪が掘った痕跡がある。痕跡はちょくちょく変わるので、数日おきに猪が現れていることは間違いない。
Mジジが提案をくれる。町役場に「コヤギの鳴き声が聴こえている。あの子を引き取りたい」と仲介を頼んでみてはどうだろう?とのこと。さっそくリサへ連絡。役場へのアプローチは別々に行うこととする。警察にお世話になった?町民とは違うふりをする。コヤギ心配件数を増やすのだ。私は「コヤギが心配だ」と訴える町民代表。リサはそのあとに連絡する。
12/15(月)
コヤギが泥土しかないB地点にいるのを確認し、井手町役場へ行く。1階の職員さんに「ヤギの担当はどこですか?」と声に出して尋ねる。
産業環境課から「あそこで飼っているそう」「除草のため農家さんが共同購入した」「だからあちこち色んな場所にいる」と よどみなく説明されるので、以前にも通報があったのかもしれない。「先週は警察に一時保護され健康状態は良いと確認されてます」、と安心させようとするので、へーと安心させられておく。飼い主へ連絡(電話だろう)しておきます、と言うので、できれば現場を見てもらえませんか?と返す。
共同購入とは初耳だ。Mジジに見解を聞く。「ほぼずっと飼い主宅の裏庭にいたし、飼い主さんは友達がいないので、1人で買ったヤギと思う」とのこと。
また共同購入であれば、12/11の「遠方へ行くから竹林につないだ」のはおかしい。何人もの農家さんが関わっているヤギならば、なぜ山中でひとりぼっちなの?
17:00 C地点
役場から連絡がいったのか、更に奥の枯草の多いところへ移動。泥水の入った容器が置かれている。(とても飲めそうにない) 食料的には改善。

B地点 草を食べつくしても つながれたままだった
12/16(火)
大家さんが私有地への不法侵入を心配している。法務局へ行き公図を確認。農道は私有地ではないようだ。竹林は細かく区分けされ番地がついている。登記情報サービスの使い勝手が悪く、所有者までは確認できなかった。リサは京都動物愛護センターへ相談に行った。
私有地(竹林)への不法侵入はどんな罪に問われるのか。googleさんによれば、1万円未満の罰金か、30日未満の拘留。1万円にくらべ30日の拘留とはずいぶん重たい。(政治的に使われるのか?) 悪質でなければ1万円未満の罰金だろう。コヤギに餌をやって前科一犯? 勲章です。
拉致はしない前提でいても、なにが起きるかわからない。一番心配なのは大型獣におそわれることだ。リサが、猪にヤギがおそわれて食べられたという記事を見つけて送ってきた。怪我や病気になることもある。飼い主が予期せぬ行動に出ることもある。非常時に連れだす手段と、連れだせる近い場所がほしい。京田辺でヒツジやヤギを飼っている岡田農園を思い出し、天然酵母パンのマテアさんに橋渡しを頼むべく連絡する。
12/17(水) 雨
クズ野菜を差し入れ。コヤギに近づくとカビ臭い。こんな場所で生活していたら仕方ないのだろうか。
ふと「広報いで」の民生委員一覧が目にとまる。なんらかの役員で、誰か力になってくれる人はいないだろうか。町会議員はどうだろう。
12/18(木) D地点
滋賀県へ出かける予定があったため、Sさんに野菜の差し入れをお願いする。前日雨だったため心配していたが、泥んこの脚で跳びかかって歓迎してくれた、とSさんから報告がきた。この日C地点から更に奥へ移動。
Sのご主人は交友関係がひろく、コヤギの話をしれっと広めてくれている。これを「シレット作戦」と呼ぶことにした。コヤギのことを知ってもらう作戦を展開していると、自然と飼い主さんの情報も集まってくる。知りたいとも思っていなかったのだが、分かってくると戦略を練りやすい。
12/19(金)
野菜を差し入れ。市民活動経験が豊富な近所のHさんに時間をとってもらい相談。親身になってもらえる議員さんを探すには「議会だより」のバックナンバーを読むんや、と入れ知恵される。また飼い主の親戚aさんから諭してもらうルートはどうか?と提案してくれた。公的なアプローチよりいい案だと思えた。光明が差してきた。aさんへのツテを探しはじめる。
Mジジに「議員作戦」と「親戚作戦」を伝えると、aさんとは道端で雑談をする仲だという。なんと! Sババも雑談仲だそうだが、最近寒いこともあり姿を見かけないと言う。あの畑に時々いる人だと教えてもらったが、たしかにあまり見かけない。MジジとSババに、aさんと遭遇したらコヤギの話をしてほしい、と頼む。リサはリサで、勇気をふりしぼって飼い主の現れそうな道を散歩しているようだ。

12/19 D地点 リードの長さ115cm。泥水が置いてあっても飲めない。
12/20(土)
D地点の枯草は食べつくしている。明日は雨なので1食お腹いっぱい食べさせる。食べ残しが飼い主さんに見つかるといけないので、コヤギが食べおわるまで付き添い、残したものは小さな欠片まで拾って撤収する。
12/21(日) E地点 ずっと雨
だいぶ奥へ移動。ロープが少し延長されている。食べれそうな枯草は増えたが、姿が見えにくい。姫路と伏見の2拠点生活をしている自然農仲間のリョウちゃんが、コヤギを見にきてくれた。
12/22(月)
暗い時間に起きだしてタオルをたくさん持って山へ向かう。生きている。体に残っている水分をごしごしと拭いてやる。かなりカビ臭いが食欲はある。
コヤギがだんだん鳴かなくなっている。12月中旬はあんなにでかい声で鳴いていたのに。エリさんにリーディングしてもらうと「この状況に慣れてきてしまっている」「寂しすぎて諦めている」「鳴くと自分に危害があるかもと思ってる」そうだ。私が諦めていないことを この子に信じてもらいたい。「また来るよ。必ず来るよ。大丈夫だからね」と声かけする。
12/23(火)
明日は雨なので1食お腹いっぱい食べさせる。
12/24(水) 雨
コヤギの体を拭いてやり食べ物をあたえる。ほかにしてやれることがない。なんと無力なのだろう。雨のなか放置されるコヤギ。
京田辺市の友人から「キャンプ用品のパラソルがあるけど、貸すよ」と申し出があり、明日持ってきてもらうことにした。けれど立てることにはためらいがある。前科一犯?望むところよ!と(心のなかで)啖呵を切ったものの、飼い主さんに遭遇しないかいつも怖い。
救えないかも・・と意気消沈しているところへ夜、リョウちゃんから電話あり。滋賀県に保護イノシシ&いろんな動物を飼っている知人がいて、コヤギの預かりも考えてくれるそうだ。また保護イノシシ知人は、コヤギの写真を見て「これは虐待」「毎日写真をとり記録をつけるべし」と言ったとか。「あんたが諦めたら誰がコヤギを助けるん?」と叱咤激励される。気が大きくなりパラソルを立てることを決意。

12/25のクリスマスプレゼント
12/25(木) 雨
10時友人が持ってきてくれたパラソルを2人で立てる。自分の運命はどうとでもなれ!と、もうやけくそである。コヤギは嬉しそうにすぐ傘の下に入った。体を拭いてやり食べ物をあたえる。
リサさんにすぐ報告を入れることができず、昼前にリサさんから電話がかかってきた。「谷田健治議員さんに相談したら、すぐコヤギを確認しようって話になって、一緒に行ったんです。そしたらパラソルが立っていて・・」 2人ともさぞかしビックリしたであろう。
リサさんによると、谷田さんは「これはひどい」と言ってくれたらしい。
13時に産業環境課の課長さんのところへ行き、現地のコヤギを確認してもらったが、役場の見解は「コヤギは元気そうなので保護できない」とのこと。
役場から飼い主へ注意喚起をすると「草がなくなったら草のある場所へ移動する」「共同購入なので移動できる場所はある」「小屋を建てようかと思っている」と言ったそうだ。この週はほかにも通報が2件あったらしい。
よりにもよってパラソルを立てた日に、議員さんと課長さんが見にくるとは。コヤギが雨ざらしだったら保護してもらえたのだろうか。21時リサとパラソル撤去。
このクリスマスの日、神様からの贈り物?はまだあった。コヤギを心配したAが晩インスタグラムに投稿。#飼育放棄 #京都府井手町 #拡散希望 のハッシュタグをつけ、「コヤギがかわいそう」「ボランティアがお世話している」「猪鹿が多発」「町役場に通報しよう」といった文面。投稿に気づいてから少し考えたが、削除を頼んだ。SNSに反応するのは野次馬 的な人が多いから。
地方の小さな村の伝統行事が、動物虐待だと電話が殺到して、中止になったニュースがあった。映像を見ると、確かに牛に荷物を引かせてムチを打っているが、どこが虐待? 行事の前と後、飼い主のおっちゃんたちは牛をうんとこさ労わっている。
インスタグラムから自動転載されたThreadse(ツイッターのようなSNS)では、翌朝6:00に閲覧1.3万回だったらしい。削除してもらったのは10時ごろだったから、SNSのアルゴリズムなら2万回は超えただろう。井手柏原に住むBは、町外の知人Cから、「SNSでコヤギのことを知った。Bは町役場に知り合いはいないのか?」と聞かれたそうだ。
さいわいにも町役場は金曜から冬休みだった。
12/26(金)
Mジジに、議員さんと課長さんの件を報告。「飼い主が本当に小屋を用意したら、譲り受けることがますます難しくなる」。さすがMジジは視点がちがう。私のプロファイリングでは飼い主は小屋なんか絶対用意しないと思うけど。なんとかaさんに会えないか考えてくれてるようだ。

12/28 立てるようになったコヤギ
12/27(土)
明け方に日課の野菜差し入れにゆくと、いつも農道のほうを見て待っているコヤギの姿が見えない。草むらの中にしゃがみこんでいた。近寄っても立ち上がらない。自分より体の大きな生物に接近されて、しゃがみこんだままというのは、捕食される動物にとって死を意味する。
これまで餌を与えていいのか迷いながら運んでいたが、食べさせなければ死んでしまう。さいわいにも食欲はまだあった。朝昼夕と3回運んでお腹いっぱい食べさせる。
12/28(日) F地点に移動
朝昼夕と3回食料を運ぶ。肉づきが少し戻ってきた。これまで野菜は、町内の商店や知り合いから提供してもらっていたが、年末年始は買わねばならないだろう。実家に電話してクズ野菜をとっといてと頼む。
12/29(月) 朝は氷点下。草が白い 820g、710g
用事があったため今日の餌やりは2回になった。帰りに京都駅前ヨドバシで頭に装着するヘッドライト、京都イオンモールで野菜をどかっと買ってくる。ヘッドライトがあれば日が暮れてから行けるので、飼い主に会うリスクを減らせる。
町外で、近いところで、一時預かりしてくれる人がいないかずっと考えていたが、アイさんが浮かんだ。三山木の井手町寄りで、広い空地がある。年末で迷惑かもしれないが電話した。引き受けてくれた。

コヤギの数十m奥に設置されている、大型獣を捕獲するオリ
12/30(火) 夜小雨 700g、870g、870g
朝は火鉢で右足首をあたため、筋トレ・ストレッチのウォーミングアップをしてから、夜明けまえに家を出る。ほんのり見える山肌を這うようにのぼる。コヤギの食事中は体をさすったり軽く叩いたりしながら話しかける。コヤギが満腹になるころ周囲も明るくなる。
夢中になって食べているあいだは振り向いてくれないが、食べ終わるとこっちを見てくれ、わたしの手を鼻先でちょんちょんと押したりなめたり甘噛みしたりする。
昼間に行くときは、12:10~12:50のあいだ現地に滞在するようにする。
夕方は暗くなりだしてから家を出る。ばくばく食べているコヤギの傍らで、竹林の底から朱色が徐々に消えていく空をながめていると、この世界にたった2人しかいないような感覚に襲われる。
すっかり暗くなってしまったとき、暗闇のなかコヤギは、動ける範囲で一番高いところにしゃがみこんだ。そこが寝床らしい。裸の土が冷たそうだ。また明日の朝来るからね、と声をかけ、ヘッドライトをつけて足をすべらさないよう斜面を降りる。下りのほうが足首が痛い。
21日、24日、25日と雨が続いていたころコヤギは最高にカビ臭かった。その時はこんな場所で暮らしているとそうなってしまうのだろうと思ったが、違っていた。体調が悪化していたのだ。体調が戻りだしてからカビ臭さは無くなった。今コヤギはむきむきで、ぴょんぴょん跳ねる。体からは香ばしい匂いがする。そして枯草を食べだした。健康状態がいいと枯草を食べることができる=消化できるのではないか。
今日は今年最後のレッスン日で、テラさんが野菜をどっさり持って来てくれた。家の近くで畑をしているおっちゃんに声をかけたと言う。テラさんは子犬とウサギを飼っており、動物大好きだ。コヤギを見たいと言うので竹林に案内。年始に私が帰省するときの食料運搬も引き受けてくれた。
黒ラブを飼っていた小屋があるそうで、この大きさのコヤギなら一時的に預かれるという。
さらにテラさんは、飼い主の親戚bさんと知り合いだった! そしてbさんを介して貴重な情報が入る。親戚aさんは既に、コヤギが警察に一時保護されたり役場に通報のあることを知っており、飼い主へ声かけしているらしい。コヤギ対策本部(私)は色めき立ち、Mジジに伝える。
12/31(水) 夜小雨 1160g、980g
コヤギが元気なので、飼い主に怪しまれてはいけないと考え、2回にしてみる。
Mジジ、aさんが竹林方面へ行くのを見かける。ヤギを見に行ったのでは、と考えたMは、頃合いを見計らってaさん宅をピンポン! 「ヤギを飼いたい人がいる」「譲っては(売っては)どうだろう」と伝えてくれた。

元旦のコヤギ
1/1(木)
1330g、880g
一年の計は元旦にありというが、私の2026年はコヤギの餌やりから始まった。朝昼と2回食べさせてから実家へ帰省。
リサが倒れた。年末から緊急入院したのだという。私の頭はコヤギでいっぱいで、リサさんの心労を考える余裕がなかった。
1/2(金)
今日はテラさんが2回ごはんを届けてくれる。城陽市に住んでいる大型犬を亡くしたばかりのご夫妻が、コヤギを中期預かりできると言っているそうだ。友人を介して奈良の大和郡山市からも申し出があった。実家からクズ野菜をもらい、途中スーパーで不足ぎみの根菜類を買ってくる。
気温が下がるにつれコヤギは、葉物より根菜類を食べるようになってきた。まず芋を食べ、次にキャベツを食べ、ニンジンを食べ、レタスを食べ、また芋に戻りと、味の変化を楽しみながら食べる。最後に1種類の野菜が残るともう食べない。「ほかの味はないの?」と鼻先をこちらへ向ける。「ぜいたく言える立場じゃないんだから、あるものを食べて」と言っても、「もういらない」という。
葉物は、いつ食べても大好きな大根菜がメインだが、味変を要求するのでブロッコリ・カブ菜・菊菜・ワサビ菜・水菜・ルッコラなどをとり混ぜて用意する。芋は、サツマイモ・里芋・じゃがイモの順に好きだ。キャベツ・人参・レタス各種・大根の実も必須。蒸したゴボウ・レンコンも喜ぶ。干し柿・干しリンゴ・干しミカンをおやつに混ぜる。柿は生だと見向きもしないが半生だとばくばく食べる。
人参・大根実はそのままだと食べられないので小片に切るかスライスする。スライスが長細すぎたり大根菜が大きかったりすると、ぶんぶん振り回してカジりやすくしようとする。飛んでったのが行方不明になって飼い主さんに見つかるとまずい。振り回すのは楽しかろうと思うが、事前にある程度カットする。
芋は1日おきに蒸す。蒸しても蒸してもどんどん食べる。台所は1食分セットされた野菜、セット前の野菜で大渋滞だ。冷え冷えの台所なので食料保存に助かる。コヤギのごはんばかり考えていて、あれ、あたし、今日の晩ごはんどうしよう? という日もある。
1/3(土) 920g、940g
あいかわらず山へでかけるときは怖い。そこでルーティンをひとつ加えることにした。飼い主さんの車がどこに停まっているか確認してから向かうのだ。山の入り口に見かけない車があるときは、それが去るまで待つこともあった。
1/4(日) 820g
食料差し入れを1日1回にしてみる。
コヤギは自分のおしっことウンチの上で暮らしており、とても不衛生だ。川沿いの枯葉をビニール袋いっぱいに詰め、サンタクロースよろしく山へ運び上げた。土が裸になったところへ枯れ葉をまくと嬉しそうだ。布団がわりなのだがもぐもぐ食べている。広葉樹の枯葉は整腸にもよさそうだ。ふっかふかにしてやりたいが、やりすぎると飼い主にバレてしまう。

1/4 枯葉をまく前。うんちだらけ
1/5(月) 1280g
これから出退勤時に人の往来が増えるので、夕方の餌やりが目撃されないよう気をつけねばならない。人助け(ヤギ助け)をしているのにビクビクせねばならないのは非常に不本意だ。
奈良へ出かけた帰りにスーパーで野菜をどかっと買ってくる。また京田辺の自然農の友人が大根菜・カブ菜を持ってきてくれた。自然農の野菜は、化学肥料を与えた野菜とはまるで違っている。
支援者の少ない年末年始を乗りこえたら、これからどうすればいいか再び考えるようになった。通報してくれる人を増やし、町役場から飼い主へ働きかけ、aさんから優しく諭してもらう。この流れがうまく機能したら引きはがせるのではないか。でもそんなにうまくいくだろうか。
この気温のなか雨・雪になったらどうしよう。雨カッパ、パラソル、小屋の3択。
事態は変わらない可能性が高いだろう。春まで食料を運び続ける覚悟を決める。
1/6(火) G地点 1300g
コヤギの場所は17日ぶりに変わっていた。水の容器に口が届かない。コヤギに生きていてもらおうという気がないのだ。
京都市内にでかけた帰り、京都イオンモールで大型犬用の雨カッパ・リードを購入。首輪・オムツがなかった、とテラさんに報告すると、黒ラブ用だった首輪とオムツを提供してくれた。
1/7(水) 強い冷え込み 780g、1660g
1日1回の給餌だと弱ってゆくので2回に戻した。枯草は元気でなければ食べられないようだ。リサから、谷田議員→役場を通して飼い主に引き取りを申し出たが、飼い続けるとの返事だった、と落胆もあらわなメッセージがきた。あいかわらず小屋を建てるとか共同購入だとか言っているらしい。
発見したてのころは、コヤギのおかれている状況がわからないので、話を広める作戦は1対1の個別でしていた。しかし最近は見知らぬ人とも雑談できるようになっている。西高月のIおばちゃんは「この辺の人はみな知っとる」と言った。
汐見商店に、横の畑からいらない葉っぱをもらえないか?と頼みにいくと、雑談していたジジたちが反応した。なんでもええのか?なにが好きなんや?ブロッコリの葉は?と聞いてくれる。数時間後には汐見商店のジジと、友人らしきジジが、軽トラにクズ野菜を積んできた。ゴミに出すんも、ここに持ってくるんも、同じやからな。玄関前に置いといたらええか? わかった、ほかにもゆうとくわ。
芋が足らない。大西商店から出入りの農家さんへ、売り物にならない芋類を譲ってくれないか聞いてもらえることになった。
知らないお客さんも交えて雑談になる。勝手に小屋を置いてきたらどう? 年末にリサさんと交わした冗談と同じことを言う。テラさんも、黒ラブの小屋ありますけどねえ・・といたずらっぽい眼で言う。
「小屋プレゼント作戦」のほか「看板作戦」というのもある。橋のたもとに「この奥、コヤギいます。かわいいよ!」という看板を設置するのだ。コヤギせんべいを販売してぞろぞろと私有地に入ってもらう。
ポジティヴなテラさんはコヤギの可愛さを楽しんでいる。知り合いに広めるシレット作戦も展開。旦那さんと娘さんもコヤギの餌やりサポーターだ。「個人ではなく施設・団体が引き取りたい、と言えば、飼い主さんも抵抗感が少ないんじゃ?」と、救出方法をテラさんなりに考えている。今引き取りを申し出てくれているところには農場や学校もある。個人のご家庭の引き取り希望より、そこの名前を使うほうがいいかもしれない。

1/8(木) 明け方小雨 1360g、2160g
リードが枯草と絡まって動けなくなっていた。リードが絡んで動ける範囲が狭められていることはよくあったが、G地点は危険を感じる。草刈りガマを持参して絡まりそうな所を刈った。裸土のところは落ち葉を敷いてやる。
冷え込んだり雨がふったりすると体温を維持するためか沢山食べる。今日は試しに夕食を多めにもっていって現地に置いてきた。
1/9(金) 夜半雨 980g、1770g、1700g
朝行くと、昨夜置いてきた野菜が凍っていた。朝・昼とごはんをあげて京田辺市へレッスンへ行く。帰宅した21時半、あまりに寒いので翌朝用にセットしていた食料を運んだ。
川沿いは街灯があるが農道にはいると漆黒の闇。月明かりがなければ顔の前に手を出しても見えない。そんな場所にコヤギはずっと置かれている。
1/10(土) 寒波 1500g、2980g
食料提供を生徒たちに呼びかけたところ、今日は続々と野菜が集まってきた。
ヒロくんは学校で育てていた大根の葉っぱを、友達の分までもらって家に持ちかえった。お母さんが、大根菜ばかりこんなにあっても・・なんで友達の分までもらってきたん?と尋ねても、どうしてだか本人にはわからない。お母さんがスマホを見ると、バイオリンの先生から野菜の葉っぱをくれ!とのメールが届いていた。
ノブさんは親戚が道の駅に野菜を出していて、穫れすぎたキャベツと白菜をどっさり持ってきた。ノリさんは冷蔵庫にあった古いカボチャと葉っぱを持ってきてくれた。

1/11(日)
京都市内で仕事がありテラさんに給餌を頼んだが、また草と絡まっていたらしい。
朝出かけようとしているとMジジから電話。「飼い主と直接話した」「コヤギを譲って(売って)もらうことで同意をとりつけた」「気温が低いので1日でも早く引き取ろう」。小躍りしながらJR玉水駅へ行き、急行に乗るつもりが普通に乗ってしまう。
リサ、テラへ連絡。今日は餌やりに行って大丈夫でしょうか?とテラさんが不安そう。餌やりが途切れないよう、飼い主に遭遇しないよう、段取りしなければならない。
年末から小屋を作ると言っていたがなあ、とMジジが言う。そんなもの影も形もありません。
1/12(月祝) 寒波 1850g
16時コヤギ引き渡しの時刻が近づく。この歴史的な瞬間に家でじっとしてはいられなくて、Mの庭に行ってみた。リサ夫妻が到着しており、飼い主さんにはこんな風に話してあるからねと、年配者からの最後のアドバイスを受けていた。
皆が待ち合わせ場所にむかい、私は川沿いの道でぶらぶらしていた。20分ほど経過しただろうか、遠くからMの戻ってくる姿が見えた。私が両腕で大きく丸をつくって「うまく行ったか?」と聞くと、同じポーズを返してきた。
テラさんは同じ時間帯、実家の畑の野菜を車に積んで、井手町方面へ走っていた。コヤギ対策本部から指令を出す。
野菜ハ、リサ宅へ届ケラレタシ。
リサによると飼い主は最後まで、自分はちゃんとコヤギを飼育している、と思っていたらしい。「(それが証拠に)ほらヤギは元気でしょう?」と言ったそうだ。
1/13(火) 寒波、雨
リサ夫妻、町役場にて飼い主の届けを出す。

コヤギ救出を各方面へ報告するのに忙しい。野菜部隊、アナログインフルエンサー(シレット隊)、心の支えになってくれた友たち、保護を申し出てくれていた人たち。
数年前に年賀状をやめて寒中見舞いに変えたのだが、2026年の寒中見舞いにはコヤギの写真と経緯を印刷した。
パラソルを貸してくれた友人が引き取りにきた。非電化工房で作ったロケットストーブに初めて火を入れ、お茶をごちそうした。
非電化工房のダイチくんにロケットストーブの写真とともにコヤギの報告をすると、「コヤギちゃんは本当に愛らしい目と体型をしていますね!」と返信がきた。そうでしょうそうでしょう。かわいいんですよ。親バカですよ。
1/26(月)
エリさんがコヤギに会いにきた。コヤギの助け方については頻繁にエリさん(というか存在たち)に助言を求めたが、それらは(めずらしく?)現実に起きていることから導き出せる答えと一致していた。
エリさんによるとコヤギには自我があまりない。コヤギは、コヤギに関わる人達のために生まれてきた。コヤギに関わった人達には、過去を清算するようなことが起きるそうだ。ふとコヤギを山から連れだせたとき、自分を見放さないでやり通せた気がしたことを思い出した。
リサさんも、高みから見られているような気がすることがある。幾度となく転生してきた魂のようだ、と言う。
1/30(金)
6/29に骨折した右足の最後の診察日で、JR玉水駅へ行った。西洋医学的には完治みたいだが、右足首はまだ組織が硬くて痛い。改札で衆議院選挙のビラをくばる男性の顔に見覚えが・・初めてお会いする谷田健治議員だった。
谷田さんは、私有地に入ってコヤギの近くまで行くことができずに申し訳ない、といった旨のことを口にされた。私は、それぞれの立場でできることとできないことがあります、と返した。議員さん・役場勤めの人は、私有地には入らないほうがいい。法を守らなければ役目が果たせなくなる。
警察から何か言われませんでしたか?ともおっしゃった。心配してくれていたのだ。井手町に勤務するおまわりさんなら、現場の荒地を見てコヤギを見て、野菜をとどけに侵入する町民がいたら、「見て見ぬふりをする」をすると信じる。(飼い主さんが1町民でよかった。地元の有力者だったりしないか当初心配だった。) 今回のできごとでは「法」についても考えさせられた。
多くの人が「これは虐待だ」と言ってくれたし、動いてくれない警察や町役場を腹立たしくも思っていた。しかしそれは感情面の話で、頭では「権力の行使は、抑制的であるべき」と考えている。私が警察や役場だったら同じ態度をとっただろう。
2月以降のコヤギは、日々の暮らし 2025-26冬 で!

