バイオリン・ビオラを弾くときの姿勢(体の使い方)がよければ、ビブラートは自然にできます。装飾音符→トリル→ビブラート→ポジション移動という順に、技術の難易度は上がります。ビブラートの前にトリルができるようになりましょう。
左で行う技術は、すべて腕の付け根から動作するものです。また腕の付け根がアダプトしている体幹が土台となります。
ビブラートができる肩を作るため、レッスンで行っている事柄を書きだしてみました。12は平易な素材を弾きながら行います。日常生活に取り入れるのも有効です。(とくに2) 右肩にも使えます。
1.肩に直接働きかける
①脇の下に隙間を作る
肋骨の側面と、上腕のあいだに、隙間を作るようにします。バイオリンを弾くときの右脇の下は必ず開きますが、左はくっつき気味になることがあります。隙間を作ろうとして、左肘を横へ上げる動作をしないように。左肘は重力方向に下げておきます。
②脇にマチを作る
ワイシャツなどトップスの服は、袖と身頃のあいだに縫い目があります。バイオリンを構えたとき、この縫い目のラインに、マチを作ります。肋骨がしぼんでいると、肋骨に上腕がくっついて、マチが作れません。
③縫い目の位置に、肉をたるませてカーテンの縦ひだを作る
前にも後ろにも作れる。前は、右手でつまむとイメージしやすい。
④ラグラン袖の縫い目の位置に、下からマントルが潜り込んでいき海溝ができていくとイメージ
盛り上がった大胸筋の上の位置。脇の下から、鎖骨の下へかけてカーブするライン。うまくいくと背中側に波及する。
⑤三角筋を体幹からはなして浮かせる
三角筋は、肩から上腕にかぶさっている逆三角形の筋肉。現代人は押し下げ気味にある。胸郭がしぼんでいると浮かせにくい。
⑥三角筋の停止部を外側へ引っ張る
停止部は、逆三角形の一番下のところ。紐・糸をつけて引っぱるようイメージするとやりやすい。体の中心線からの距離を伸ばす。左肘を横へ上げない。
⑦肩甲骨を浮かせる
左手を背中に回して肩甲骨を触ると、肩甲骨が体幹からはなれて浮いてくる。介助者が浮いた肩甲骨をつかんでおいてあげると、左手を前にもどしても肩甲骨が埋没しにくい。
[コラム]
生徒さんの姿勢を修正していると、本人が集中して模索している最中に、左手がビブラートらしい動きをすることがあります。「いまビブラートに近い動きをしましたね」と声をかけても、大抵きょとんとされます。フォームが良ければ、ビブラートは勝手にかかるのです。

2.肩以外に働きかける
①肋骨をふくらませる
中から外側へ押す。息を吸いながら押す。とくに背面、側面(別々にやる)。肋骨同士のあいだを広げる。
②前鋸筋をイメージする
前鋸筋は、第1~8肋骨の前面にヒトデのような形状で起始し、肋骨の側面から肩甲骨の裏側をまわり、肩甲骨のセンター側の側面に停止している。
③僧帽筋と起立筋で、頭をうしろへ引っぱる
背中の表面には大きなダイヤモンド型の僧帽筋が、その内側には脊柱起立筋と呼ばれる縦方向の筋肉群がある。後頭部を背面へ引っぱり(支え)、前方へすべり落ちないようにする。
④直方体でないところを感じる
胸郭や体幹の三次元的ありかたを、直方体に感じるようにする。左右・大小に様々な直方体が入れ子になっている。ひずんでいる箇所=ひし形がないか探して感じる(観察する)。
⑤だるま落とし
ボディをだるま落としのように3~6ブロックの輪切りにし、向きを合わせるようにする。おへそを左右に動かして、どこが合ってるか探す。このとき上下のブロックは動かさない。
⑥腰の感じ方を変える
・下腹部の筋力をゼロにする
・お尻を切り離す
・上半身と下半身の境目を、下にさげる
3.体操
①竹刀をふる
傘など手近にある長いものでもできるが、竹刀が一番いい。天井にぶつかる場合は座ってやる。または折り畳み傘など短いものを使う。
②スワイショウ
スワイショウは中国の伝統的な健康体操だそう。でんでん太鼓のように腕を左右に振るものが最もポピュラーだが、これではなく、腕を前後に振る。腕が後ろへ行ったとき、肩甲骨が上へ外れるようにする。
③羽ばたく
腕が羽になったとイメージする。鳥らしく本当に飛べるようにと思って動かす。上腕骨の付け根ではなく、鎖骨の付け根(背骨のきわ)から。
体操系はほかにもたくさんあります。2人ペアで行うものもあります。