梅雨前に仕込んだ梅ジュースと梅干し。容器のなかで微生物たちが活動しています。2月に急いで仕込んだ味噌樽は、フタをあけてのぞいたら麹菌がモコモコに! ひえ~と叫びながらモコモコを取りのぞき、天地がえし。濃い塩水でかたく絞った布巾をかけ、ラップをしました。
パンは、南部小麦と干柿酵母と海塩で作ります。中力粉なので ふわふわにはなりませんが、飽きない味です。

発酵食品を作るときは、素手のほうが美味しくできます。てのひらに生息している常在菌が、酵母菌とかけあわさって、味わいが増すからです。もちろん不衛生な手はダメですが。丁寧な水洗いがベスト。
皮膚には多種多様な常在菌が生息しています。「あなたの身体は9割が細菌」という本があるくらいです。「キズ・ヤケドは消毒してはいけない」という本もあります。

パン酵母で「白神こだま酵母」という商品があります。天然から採取したものですが、単一菌だそうです。またその単一菌を取り出すのに、合成化学物質を使っているとのこと。そう知ったとき腑に落ちました。ホシノ天然酵母や、ドイツの有機穀物で作った天然酵母の方が、自然な感じがしたからです。

味噌やパンを手作りをすると、バイオリン・ビオラを弾くのに向く、ひらべったい手になります。

腸内細菌の分布は、善玉菌2割、悪玉菌2割、日和見菌6割と言われます。善玉菌が優位だと、日和見菌も善玉菌のように働く。悪玉菌優位だとその逆に。という話を聞いたことはありませんか?
皮膚の常在菌も同じです。常在菌のなかで善玉菌が優位に立っていると、常在菌たちは人に益をもたらします。垢を分解したり、外から侵入する病原菌を防いでくれます。実際、皮膚は腸壁とつながっています。人間の体の構造は「うきわ」のようなものなのです。

私は土やヘナで爪を黒くするので、手洗い石けんがいります。アレッポの石けんなど、市販のものを試していた頃は手荒れが絶えませんでしたが、友人が作った石けんにしてから荒れなくなりました。
体や髪に石けんは使いません。汗をかいたあと水や湯で流すと、垢も一緒に落ちてゆきます。気持ちわるいときは物理的ゴシゴシをします。でも物理的ゴシゴシも、だんだん必要でなくなってきました。頭皮も、マッサージして汚れを流してから、木酢液・竹酢液などでリンスして流すと、さっぱりします。

「松の力」という洗剤を売っていた女性からこんな話を聞きました。OL時代、毎日白いシャツに襟ジミがまっ黒だった。自分が汚いのかと思って、お風呂のとき石けんで体をごしごし洗っていた。OLをやめて体はお湯をかけるだけにしたら、襟ジミがなくなった。

どんな種類の常在菌を持っているかは、ひとりひとり違います。母体、生活環境、育った地域から引き継ぐためです。赤ちゃんは生まれるとき、お母さんの膣内の菌を 自分の皮膚にこすりつけながら出てきます。
分娩のとき母体が便意をもよおすのも、腸内細菌を赤ちゃんに引き継ぐための自然の摂理です。便の固形分の1/3は腸内細菌ですから。
帝王切開になるとき、便を事前に取っておいて産まれたての赤ちゃんにこすりつけるよう、病院側に頼んだ事例もあるそうです。
出産時に母体からもらったあとは、周囲と接触することによって、その人固有の菌分布を作っていきます。

赤ちゃんは虫歯菌を持っていないので、虫歯菌を持っている大人がほおずりしてはいけない、と言います。歯に関する悩みが多い私も、虫歯菌をもらわず、あげず、生きれたら良かったなと思いますが、そもそも菌は単一に存在することはありません。
善い菌と悪い菌を(完全に)選りわけることはできません。腸内の日和見菌のように、周囲の状況で善悪は変わります。(まるで人間のよーじゃありませんか。)単一の菌だけをとりあげて一喜一憂しないでおこうと思います。

農作物における益虫や害虫にも、同じことがいえると思います。

近年アレルギー疾患が増えたのは、身辺から菌がいなくなりすぎたから、体から寄生虫がいなくなったから、という説があります。免疫機能が、攻撃する寄生虫や菌がいなくなったので、自分自身を攻撃してしまう、という話です。
寄生虫は、アレルギー抑制物質を出しているそうで、そのエキスを投与したり、回虫を身体にもどす治療法もあるようです。肥満も、腸内細菌が関係するそうです。
寄生虫 説はまちがってはいないが、アレルギー疾患の主要因ではない、と言う医師もいます。

 人類が寄生虫の駆除をしてきたのは、寄生虫によって引き起こされる深刻な疾病があったからです。寄生虫がいなくなったことで現代病が増えたからといって、寄生虫を戻すという発想は短絡的かもしれません。

「菌」とひとくくりにしましたが、菌には「真菌」「細菌」「ウイルス」などがあります。真菌→細菌とサイズが小さくなり、だんだん作りが単純になります。

一番小さいウイルスは、宿主の中でしか生きられません。宿主を殺してしまうと、自分も死ぬしかないのです。だからウイルスは生物とは言えない、という学者もいます。
私たちがよく知っている病原菌は、たいてい細菌です。大腸菌やサルモネラ菌など。害ではなく益をもたらすものでは乳酸菌があります。
真菌になると目に見えるものが出てきます。カビや白癬菌、酵母菌や麹菌、キノコ。
真菌の次に大きな生き物は「原虫」「寄生虫」だそうです。人が決めたカテゴライズなので、技術の進歩とともに分類の仕方も変わります。

いま「悪い奴」とされているピロリ菌も、40年前に発見されたてほやほやです。何十年かたったら「良い奴」とされているかもしれません。
新型コロナウイルスが発見されたのも、科学技術が進歩したからです。何十年も前であれば、 ”今年のインフルエンザはきついな~” って話で終わってたかもしれません。