バイオリン/ビオラの張りかえたばかりの弓の毛は、ツルツルしていて弦をこすることができません。買いたてのバイオリンセットは、弓に松脂が塗られていないこともあるので、初心者さんは驚かないように。
バイオリン・ビオラ・チェロの専門店で買えば、当然購入前の試弾もありますから、松脂が塗られた状態で納品してくれます。初心者さんこそ、バイオリン専門の楽器店で買うべきです。敷居が高いと言わず、そこを乗り越え?て専門店で買ってください。
バイオリン弾きの友人が、知人の子供さんに分数バイオリンを貸したときの話です。友人は、弦と毛を新品にしてから貸しました。ところが「全然使えない」と言われて戻ってきました。
戻ってきた分数バイオリンを確認したところ、弓の毛がツルツル(松脂が塗られていない)で、無理やり弾こうとしたのかブチブチに切れていました。もちろんケースに松脂は入っていました。
♪ 松脂はいつ塗るか?
バイオリンを弾く前に毎回塗りましょう。
松脂の量は、多すぎても少なすぎても美しい音色が出ません。また、弦を弓で触ったときの感覚が育ちません。
毎回塗らないということは、まとめて塗ることになります。塗った日は松脂が濃く、日を経るごとに薄くなります。
まとめ塗りをすると、前回いつ塗ったか考えたり、周期を把握しなければなりません。次第に塗らなくなり、ツルツル手前の弓の毛で弾いているケースもあります。
ほどよい松脂の量という感覚がわからないと、「バイオリンは難しい→止めてしまう」という事態になります。
♪ 松脂の適量は?
松脂の適量は、弦は白くなるけど、表板には白い粉があまり落ちない くらいです。弓で弦を引っ掻いたとき、弦が白くならないのは、松脂の量が足りません。バイオリンの表板まで白くなるのは多すぎます。
♪ まんべんなく塗るには
松脂を往復させているだけだと、真ん中が厚ぼったくなり、両端が薄くなります。端から端まで同じ濃度で塗れていないと、弾きにくくなります。両端がツルンとしており、端から離れるに従って濃度にグラデーションがかかります。グラデーションのあるところで弓を折り返すと、うまくコントロールできません。
弓の毛の両端は、松脂を少し強く押し付けるか、松脂を小刻みに往復させるなどして、どの場所も同じ濃度になるようにしましょう。
弦を弓の毛で擦って(こすって)音を出す楽器は、「擦弦(さつげん)楽器」と呼ばれます。
弦をはじく楽器は「撥弦(はつげん)楽器」。
弦をたたく楽器は「打弦(だげん)楽器」。
ピアノやチェンバロが弦楽器だと聞くと驚かれるかもしれませんが、実はピアノは打弦楽器、チェンバロは撥弦楽器です。打弦楽器は、ピアノくらいしかメジャーな楽器がありません。
撥弦楽器は、「はじく」という奏法が一番シンプルなためか、たくさんあります。ギター、ウクレレ、箏、三味線、ハープ、ライアー。バイオリン・ビオラにもピッチカートというはじく奏法があるのはご存知の通りです。
擦弦楽器もあまり多くありません。バイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバス以外には、胡弓・二胡・馬頭琴くらいしか思いつきません。
胡弓は弦が3~4本の日本の楽器です。二胡は弦が2本の中国の楽器です。馬頭琴はモンゴルの弦楽器です。いずれも弓の毛は馬のしっぽで、そのままだとツルツルなので、松脂を塗る必要があります。バイオリン用の松脂は優秀で、値段もそこそこなので、胡弓・二胡・馬頭琴でも使うことがあるようです。